服装批判は成功の裏返しである
今年のゴールデンウイークは石破茂首相のベトナム・フィリピン訪問に同行してきた。トランプ米大統領の登場で国際社会が関税問題などますます混迷する中、ASEAN諸国との連携の重要性が増す。フィリピンとは自衛隊とフィリピン軍の間で食料と燃料を提供しあう「物品役務相互提供協定」の締結に向けて交渉を始めるとされており、収穫は大きかったと思う。
石破首相の外交は派手ではないが、首脳間の信頼を深めるという点では順調だったと思う。また、6月にカナダで開催されるG7サミットを前に、良い経験が積めたと思っている。
今回は、石破首相夫人の佳子さんも一緒だった。夫人にとっては2度目の同行であったが、ベトナムのトー・ラム共産党書記長夫妻主催の夕食会で着用していたワンピースが「カジュアルすぎる」と批判されてしまった。公開された写真から、インターネット上で、夫人の花柄のワンピースが女子大生に人気のブランドで約2万円のものと特定され、「年齢に合わない」「外交の場にふさわしくない」「書記長夫人が民族衣装のアオザイだから、佳子夫人も着物にすべきだった」などの書き込みが相次いだ。
夕食会といっても、大統領や首相が主催する公式の晩餐会ではないから、夫人の服装は外交儀礼に反してはいない。国賓として晩餐会に招待された場合など、ファーストレディは着物姿のことが多いが、今回はそういった正式な席ではない。ベトナムも気温が高いので、涼しい服装を選んだのではないか。
それに、フィリピンで佳子夫人と懇談したマルコス大統領夫人はひざが見える丈のスカートだった。日本の首相夫人が同じ服装をしたら、批判の的になるだろうと思った。服装はともかく、大統領夫人とは意気投合したようで、ふたりが手をつないで歩いている様子も見られたから、ファーストレディの役割を十分に果たしたと思う。
首脳会談を前に握手をする石破茂首相とフィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領。今回の訪問の成果は大きなものだったが、訪問とは関係のない批判も多かった。飯島氏は「成果ではなく夫人の服装に話題が集まるのは残念でならない」と寂しげな表情を浮かべていた。
今回は石破首相の立ち回りには特に問題がなく、批判が趣味のネットの人々にとって唯一の突っ込みどころが夫人の服装問題だったのだろう。佳子夫人には気の毒だった。服装への批判の中には「値段が安すぎる」というものがあったが、石破首相の家庭はやはり、庶民の感覚を失っていないのだと感じた。
今春、石破首相が自民党新人議員との会合で10万円分の商品券を配布したことについて、「自分を見失っていたところがあるかもしれない」と謝罪したことがある。石破首相はポケットマネーで購入したものを渡しただけで法的にも全く問題はないし、謝罪する必要はなかったと考えているが、これも、ある意味で石破首相の庶民感覚を示すものかもしれない。私も知人の祝い事などがあれば、3万〜5万円くらいのご祝儀を用意する。数十万とか数百万とかなら多すぎるといえるが、10万円なら、少し多いかもしれないが、一般的な儀礼の範囲内だと思う。
一時期、この新人議員への商品券配布が慣例となっていたかのような報道もあったが、私が首席秘書官としてかかわっていた小泉内閣では一切やっていない。小泉純一郎元首相の場合、日ごろから贈り物のやりとりはしないと公言していて、バレンタインのチョコレートすら返却していたから、当然といえば当然である。石破首相も、人付き合いが悪いのは永田町でも有名だったのだから、それを逆手にとって、商品券配布のような付き合いを断ったとしても誰も驚かなかっただろう。周囲の評判を気にするという点も、石破首相の庶民的なところかもしれない。
ところで、最近の私が楽しみにしているのは、海外出張先の喫煙所で石破首相と遭遇することである。今回は、フィリピンで一度ニアミスがあったが、残念ながらゆっくり会話することはできなかった。
外務省の担当者に確認したところ、首相の宿泊先については喫煙可能な部屋を予約し、灰皿も用意したというが、室内では決してたばこを吸わなかったそうだ。以前、数十万円かかるといわれる部屋のクリーニング代を気にしていると聞いたが、今回は夫人も同行していたので遠慮したのだろうか。
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