価格は下がらないが溜飲は下がった

令和の米騒動も、小泉進次郎農林水産大臣の登場で、一段落したような印象を受ける。政府の備蓄米を低価格の随意契約で大量放出したものの、時事通信が発信しているスーパーでのコメ平均価格などを見ると、市場価格はそれほど下がってはいないようだ。それでも、不透明な流通経路の問題に切り込む姿などが、消費者のよいガス抜きになっているのではないかと思う。先代の小泉純一郎元首相時代からの支援者には横須賀市の大手コメ卸業者もあり、よく踏み込んだものだと感心した。

正直に告白するが、最近まで私はコメが高値になっているという実感があまりなかった。というのも、高齢の夫婦が2人で暮らしていると、コメをあまりたくさん食べないのだ。だから、我が家は数年前からパックご飯を愛用しており、コメを買わない生活が続いていた。パックご飯は、そのとき食べたい量だけレンジでチンすればいいので非常に便利だし、保存状態に気を配る必要もない。

私は農家の知人も多く、秋になると、新米を送ってもらう機会も多い。わが家では食べきれないので、息子の家族や親族に配る。親戚や友人にコメ農家の方がいて、店頭でコメをあまり買わないという人は珍しくないと思う。「コメを買ったことがない」と発言して辞任に追い込まれた江藤拓前農水相は気の毒だと思うが、国民の大多数を占める消費者を無視したかのように受け取られたのがよくなかった。

というわけで、令和の米騒動と大々的に報道されるようになるまで、コメの価格高騰を問題視していなかった。

では、なぜコメの価格がこれほど上昇したのか。2023年夏の酷暑によりコメの品質が低下して流通量が減少する一方、コロナ禍以降のインバウンド需要増、さらには、24年夏の南海トラフ地震臨時情報の発表後の買いだめの影響などと分析されることが多いようだ。個人的には、この南海トラフ地震に備えた備蓄の需要が大きかったのではないかと考える。1970年代のオイルショックや、コロナ禍のときに、トイレットペーパーの買いだめ現象が起きたが、日本では、何かが起きると、横並びで同じ行動をとる人が多いように感じている。

また、今回のコメの値上がりには、他の物価上昇と同様に、ガソリン価格の影響による流通コスト増もあるだろう。こうした燃料のコストは、ウクライナや中東の情勢も大きく関わっているから、これは日本一国でどうにかできる問題ではない。

コメの価格高騰は本当にさまざまな要因が絡み合っている。残念ながら、政治が何か対策を打ったからといって、すぐには価格は下がらない。

生産者側から見れば、昨年産のコメは契約して出荷済みだし、今秋収穫予定のコメについても、作付けは終わっているから、もう変更できない。さらに、来年の種もみの割り当てもある程度決まっているから、急にコメの収量を大幅に増やすのは難しいらしい。随意契約で安値の備蓄米が大量に出回ったことで、多少は値下げの傾向が見えてきたが、市場に十分な量のコメが流通して、価格が落ち着くには、2~3年かかるとの見方がある。

しかし、輸入に依存している肥料や、田植え機やコンバインといった農業機械や、それを動かす燃料など、コメの生産コストは年々増大している。今までの値上がり幅が緩やかすぎたといえるのかもしれない。かつてのような価格水準に戻らないことも覚悟すべきだと思っている。

こうした状況をビジネスチャンスに変えている企業もある。セブン-イレブンのおにぎり100円セールがいい例だ。コメの価格が高騰している中で実施するのは大変だったと思うが、バカ売れしているようだ。客はおにぎり以外の商品も買うから、売り上げはかなり伸びるだろう。ごはん食べ放題の外食チェーン店の客足も、かなり伸びていると聞く。

(写真=CNP/時事通信フォト)

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