誰も予想しなかった「なめられてたまるか」
私がこの原稿を書いている今、参議院議員選挙はようやく終盤戦に差し掛かったところだ。というわけで、選挙結果については後日分析したいと思う。ただ、各党の動きを見ていると、選挙もずいぶんと様変わりしたと感じる。候補者や政党とは無関係の人々が、ネット上で選挙について発信して盛り上がるなど、アナログ派の私からすると、時代は変わったと思わされる。
それにしても、石破茂首相の「なめられてたまるか」発言には驚かされた。石破首相は、選挙演説でも、国会での討論でも、感情的になることなく、政策をまじめに論じるという印象が強かった。それが、米国のトランプ大統領から、25%の関税を課すとの書簡が届いた後、千葉県内での街頭演説で、「国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか。たとえ同盟国であっても正々堂々言わなければならない」と声を荒らげたのだ。
これに対して、野党や一部マスコミからは、「交渉のハードルをさらに上げてしまった」などと批判が相次いでいるが、私は、トランプ大統領の対応のほうが異常であると思う。7月中旬の時点で、トランプ大統領との関税交渉が合意に達したのは、英国とベトナムの2カ国だけだ。国際社会全体では、トランプ大統領の言い分を理解できるという国が少数なのである。石破首相が怒るのも無理はない。
外交交渉というものは、事務方で双方が求める詳細な条件などについて話し合い、その積み上げた内容を見て、国のリーダーが最終判断を下すのが一般的だ。日本側は赤沢亮正経済再生担当相が7回も訪米して、米国のベッセント財務長官、ラトニック商務長官ら閣僚と交渉を重ねてきたが、合意に達しないまま、トランプ大統領がSNSで「日本の関税は25%」と発表してしまったのである。
赤沢大臣も苦しい立場にあると思うが、これまでの事務方の苦労を思うと本当に気の毒だ。おそらく、米国の事務方もトランプ大統領のやり方には複雑な感情を抱いているのではないか。
「プレジデント」の読者ならご存じだと思うが、米国から見て日本との貿易収支は赤字となっているものの、日本は世界最大の対米投資国である。自動車メーカーなど多くの日本企業が米国に進出して多数の雇用を生み出している。一方、対日貿易赤字は、1980年代の日米貿易摩擦の当時からは大幅に減少している。つまり、トランプ大統領の政策にこれほど貢献している国はないはずで、それこそ「なめられる要素はない」のである。
米国から見て貿易黒字のブラジルに50%の関税を課すなど、トランプ大統領には一貫性がない。トランプ氏に近かったボルソナロ前大統領への訴追を批判するなど、トランプ氏に批判的なルーラ現大統領に対する反発もあるようだが、ルーラ大統領は対抗措置も辞さない構えを見せている。
選挙のネット戦略で平等性は保たれるのか
さて、トランプ大統領もそうだが、私はSNSを使った政治活動というものに違和感がある。見る人が多いとそれでお金が儲かる仕組みがあるというが、それは、有権者に政策を訴える際に問題にならないのだろうか。この分野のことを調べながら、私なりに現状を分析してみた。
① 公示前であれば、年齢・性別・職業などターゲットを絞ってネット広告を出せる。これまでと違った戦法が使える一方で、ネット広告の知識によって差がつきそうだ。
② 若い層は長い動画を見るのが苦手とされることから、政治系でも30秒から1分程度の「ショート動画」が人気となっている。街頭演説なら10〜20分かけて説明する政策を短時間で十分に伝えられるのか疑問がある。
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