一流の人望力をもつソニーG会長・吉田氏
また、こうした豊かな体験は、人との会話の質をも高めてくれます。ありがちな悪口や陰口ではなく、「こんな素晴らしい料理があってね」「あの場所、行ってみた?」といった前向きな話題が会話に広がりをもたらし、ポジティブな空気を生み出します。
人と会って楽しい話をすることで、さらに新たな楽しい情報が戻ってくる――そんな好循環をつくることが、自分自身を豊かにしていくのだと実感しています。
これまでの人生で出会ってきた人の中で、特に「事前期待を超える」存在として印象に残っているのが、ソニーグループ会長の吉田憲一郎さんです。
吉田さんは子会社の社長をしていた2013年に、経営的に厳しい状況だったソニーに呼び戻され、CFO(最高財務責任者)、そして社長CEO(最高経営責任者)として経営の立て直しを推進した方です。まさに関係者の期待を超える大改革を実現してきました。
吉田氏が覚えてくれていた「些細なこと」
吉田さんとは同じ年齢ということもあり、20年以上の付き合いです。彼は人を大事にします。象徴するのが、会った人との出来事や一緒に回ったゴルフの回数まで記録していること。そして、毎回その記録をもとに話をしてくれるのです。
先日、一緒にゴルフのプレーをしたときも、
「金川さん、今日、一緒にゴルフを回るの何回目かわかりますか?」
と聞いてきました。私が考えていると、メモを見せてくれながら、
「15回目ですよ。1回目のときのこと覚えていますか?」
というふうに話してくれます。会話が途切れません。話していて楽しい。形式張らず、いつも自然体でいます。
家族との時間も大切にされており、週末のどちらか1日は、自閉症で知的障がいがある息子さんと過ごすと決めていらっしゃる。そうした姿勢に、私は心から敬意を抱いています。
吉田さんは常に私の予想を超える行動をしてくれます。私が経営に関わっているエル・ティー・エスの幹部向けに講演をお願いした際も、吉田さんは多忙を極める中、快く引き受けてくださっただけでなく、会食にまで参加してくださいました。このような対応も、まさに「事前期待を超える」ものであり、心から感動しました。
講演で、何よりも私が共感したのは、「対話を誠実に行うこと」の重要性を強調していた点です。都合の良いことばかりを伝えるのではなく、正直に現状を伝えることで信頼を築く。その真摯な姿勢が、企業価値の向上にもつながっているのです。

