それでも諦めきれずにいたところ、日本の酷暑対策としてハンディファンが急速に普及。調べてみると、充電式送風機のコストが一気に下がったことがわかった。ハンディファンの構造を取り込むと、初代を商品化するよりも大幅に低価格で作れることが判明する。
これが社内を説得する追い風になり、初代のリリースから5年、ついに商品化に漕ぎつけた。販売開始から1年、「猫舌ふーふー」も意外な売れ方を見せている。
「アジア圏以外ではそれほど熱い飲み物、食べ物ってないんですよね。でもコーヒーの熱さだけは世界共通で、どうしてもフーフーしないと飲めなかったということで、2万匹のうち半数は海外で売れています」
ボツ企画を商品化する「2つのカギ」
最初はほぼ無視された「甘噛みハムハム」と、何度もボツになった「猫舌ふーふー」。低評価を覆して商品化するためのカギが2つあるという。ひとつは「熱量」だ。
「『お前バカだな、でもちょっとやってみるか』まで持っていくには、自分自身がその企画に対して本当に親身になっているか、その熱量を伝えるのが一番重要です。何度も同じ企画を出したらふざけるなと言われるかもしれないので、例えば角度を変えてみる。そのために人の意見を聞くのもいいですよね。簡単なモックを作ってみるのもお勧めです」
もうひとつは、「先にお客さんを見つけること」。
「先にお客さんを見つけて、その人たちが欲しがってるなら作るしかないと会社に思わせることを意識しています。『猫舌ふーふー』なんて企画がぜんぜん前に進まない時期から、東急ハンズさんやロフトさんに通って『これ、めっちゃよくないですか?』『一般発売したらいいですよね』『商品化したら一緒に売りましょう!』と話をしていたんです。そうやって企画段階から『商品化されたらハンズさん、ロフトさんが置いてくれます』という提案ができると、会社も動きやすくなりますから」
冨永さんの話を聞いていたら、「高校時代、サッカー部のフォワードとして通算150ゴール以上決めた」という彼のエピソードを思い出した。決して強豪ではない一般の公立校で150ゴールは、まさに点取り屋だ。
点取り屋に必要なのは、何度シュートを外してもシュートを打ち続けられる図太さと、ここにボールが来るかもしれないと察知する嗅覚。企画がボツになっても諦めないのは図太さで、日常のなにげない瞬間を切り取ってヒット商品を生み出すのは嗅覚だろう。
「僕、ボールがこぼれたところにたまたまいてゴールを量産するごっつぁんゴーラーだったんですよ。嗅覚には自信がありした」
赤ちゃんの「ちら見」が世界に刺さった
その嗅覚を存分に発揮した商品が、「みるみ」。2024年のある日、大阪出張の帰りに新幹線に乗ったとき、通路を挟んで斜め前の席に赤ちゃんを抱っこした女性がいた。赤ちゃんと目が合った冨永さんは、変顔をして笑いを取ろうとした。すると、赤ちゃんが二度見したり、母親の肩口に隠れようとしたりした。そのときに、ビビビッときた。
「赤ちゃんがちらっとこちらを見たり隠れたりするのってすごくかわいくて、周りの人にも幸せを振りまいている感じですよね。この仕草、めちゃくいいと思ったんです」
ちょうどメイカソンに向けてアイデアを考えているタイミングだったため、翌日、メンバーに伝えたところ、「確かにかわいいかも!」と賛同を得た。この仕草をどう落とし込むかを考えたとき、「動くロボットと目が合う、それを身につけて歩くことは新しいよね?!」という話から「みるみ」のアイデアにつながり、メイカソンで高評価を得る。
CESに出展すると世界中で話題になり、今年4月に商品化されるとあっという間に3万匹が売れたというのは冒頭で触れた通りだ。
「ふーふーが意外と大変なことも、甘噛みが痛気持ちいいことも、赤ちゃんのちら見が嬉しいことも、普段は特に意識しませんよね。そういう感覚を自分の言葉にして伝えることができると、それわかる!って世界の人に刺さることがあるんですよ。同じように見過ごされている感覚がまだたくさんある気がします」
ロボットというと、人間の仕事や作業を代替する「役に立つもの」を想像しがちだ。しかし、ユカイ工学ではロボットを「人の心を動かすもの」と定義する。そう考えると、まだ遠い存在に思えるロボットが、普段の生活に入り込む余地がありそうだ。浪速のごっつぁんゴーラーは、常にそのスペースを狙っている。
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