Tシャツなのに、1万円超
1万円を超える無地の半袖Tシャツがずらりと並ぶ。受注生産販売のこれらの商品は、国内外の消費者やバイヤーなどが買い求め、売り切れや入荷待ちが起きることもある。累計販売数は2万1000枚を超える。
「EIJI」というブランド名のこのシャツ。高額には理由がある。“綿の王様”と呼ばれる超長綿の一種、オーガニック栽培のアルティメイトピマ綿を使用している。軽さと着心地の良さを実現するために80番手の糸を使い、美しい光沢感と丈夫さを出すために目の詰まった40ゲージという編み方で生地にしたのだ。
手掛けるのは、大阪市に本社を置く三恵メリヤス。創業は大正15(1926)年。従業員15人ほどの縫製メーカーである。
こうした商品が作れるのは、高い技術力を持つほか、今はもう手に入らないような機材を所有し、さらに自社だけではなく、大阪を中心とした関西エリアの職人たちとタッグを組んでいるからなのだ。現に、三恵メリヤスの三木健社長は、地域性に強いこだわりを持つ。それは品質面で特に大きな役割を果たしている。
「物理的な距離は重要なのです。例えば、仕上がりの色にムラが出た時などに、『どうします? ちょっと行きますよ』といったやり取りができます。でも、すぐに会いに行けるような距離でなければ、ものづくりの機動力がどんどん弱くなってしまいます」
グローバル規模で生産体制を構築する大企業とは対照的な環境である。アパレル商品の海外生産が当たり前になった今、なぜこの小さな町工場は、100年もの間、「日本製」「大阪製」を守り続けるのだろうか。
経済産業省によると、日本の衣料品等の市場規模は、1991年の15兆3000億円をピークに縮小の一途を辿り、2021年は8兆6000億円と、30年でほぼ半減した。そうした逆風にも負けずに地元密着のものづくりを続ける三恵メリヤスの信念に迫った。

