国が年金の繰り下げ受給をすすめる理由
年金は原則として65歳からもらえます。ただし、受給開始を60歳まで早めたり(繰り上げ受給)、75歳まで遅くしたり(繰り下げ受給)することもできます。これを聞くと、「もらえるなら少しでも早くもらいたい」と、あなたは繰り上げ受給を希望するかもしれません。
でも、繰り上げ受給をすると、1カ月早く受け取るごとに年金が0.4%減り、年間で4.8%の減額になります。一方で繰り下げ受給をすると、1カ月遅らせるごとに0.7%増えます。1年間繰り下げると、年金が8.4%増えることになります(昭和37年4月2日以後生まれの場合)。
年金をもらうのを先延ばしにするとお得ですよ、この制度を通して国がそう言っているわけです。実際、国は繰り上げ受給をすすめていません。国の言い分は次のようなものです。まず、繰り上げ受給をすると年金額が減ってしまいます。
繰り上げの損益分岐点は「80歳10カ月」
もし60歳から受け取ると24%の減額、つまり100万円受け取れるところが76万円になってしまう計算です。損益分岐点は80歳と10カ月、これを超えて長生きする場合は繰り上げ受給をしないほうがいいことになります。長生きすればするほど損するのです。
次に、60歳以上で働きながら年金をもらうと、年金の一部あるいはすべてがカットされるからです。これを在職老齢年金制度といい、2026年4月からは老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額の合計で月65万円以上ある場合に年金が減ることになっています。
国は働いて収入のある人が年金をもらうことには消極的なのです。同時に、国は企業に60歳以上70歳未満の人を雇う努力を求めています。
つまり、こう言いたいのです。「70歳まで働いて、その間は繰り下げをし、将来の年金額を増やしましょう」と。さらに繰上げ請求後は、障害年金など一部の給付は請求できなくなります。障害年金とは、病気や怪我で一定の障害を負ってしまったときに支給される年金です。持病があるなど健康に不安がある場合は、繰り上げ受給をすると損をする可能性が高いのです。
そして遺族年金をもらえなくなることです。


