66歳でもらうと追いつくまで12年かかる

繰り下げた場合、総額で追いつくのに長い年月がかかるデメリットもあります。66歳で年金をもらい始めたとき、通常どおり65歳からもらい始めた人に総額で追いつくのは、額面の計算で12年後です。つまり78歳まで生きないと損をします。

ただし、これは額面の話です。手取り額で考えると、損益分岐点はもっと先になります。

Aさん(大阪市在住、独身男性、扶養親族なし、公的年金以外に収入なし)の場合で計算してみます。公的年金は65歳で額面金額が月15万円、手取りで月13.8万円です。66歳まで1年間繰り下げると手取り額は月額約8000円増え、月14.6万円になります。

66歳で繰り下げ受給をしたときの合計の手取り額が、通常どおり65歳でもらい始めたときの総額に追いつくのは17~18年後です。つまり、84~85歳まで生きないと、65歳から受給する人よりも損をするのです。さらに、保険料納付期間が将来延びる可能性があります。国民年金は現在、20歳から60歳まで40年間の加入です。

この納付期間を65歳までの45年間に延長する案が検討されていましたが、2025年の年金制度改正では見送られました。ただし、将来的な課題としては残っており、いずれ再び議論される可能性があります。もし実現すれば、60歳からの繰り上げ受給がなくなることも考えられます。

年金制度は改正のたびに変わるので、早めにもらい始めるという選択肢があるうちに検討しておくことは大事です。

コインを受け取る手
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

年金受給年齢の最適解が「60歳」のワケ

では結局のところ、年金はいつからもらうのが良いでしょうか。実は、繰り上げ受給や繰り下げ受給を選んでいる人は、厚生年金の場合わずか1%程度です。約98%の人が65歳で年金を受け取っているそうです。それでも、私は60歳で繰り上げ受給することをおすすめします。

よくある考え方は、損益分岐点と寿命を考える方法です。手取り額で損益分岐点を計算すると、繰り下げた分の「もとが取れる」年齢は81歳から83歳くらいになります。つまり、それ以上に長生きをするなら繰り下げたほうがお得ということになります。

平均寿命は男性が81歳、女性が87歳くらいですから、それより長生きする可能性は十分あるといえるかもしれません。

しかし、寿命で考えるよりも健康寿命で考えたほうがいい、というのが私の意見です。健康寿命とは自分の力だけで普通に生活できる期間のことです。自分の力で動けなくなったあとにたくさんお金をもらっても、旅行に行ったり美味しいものを食べたりはできないかもしれません。人生を楽しみたいなら、健康なうちにたくさんお金をもらうほうがいいとも思うのです。