繰り上げでも手取りの差はわずか30万円
計算してみます。
年金額の額面が年間200万円の人が通常どおり65歳からもらうと、税金と保険料を引いた手取りは約178万円です。一方、60歳から繰り上げ受給すると額面は24%減の152万円ですが、65歳以降は控除額が増えるため手取りは約148万円になります。65歳受給との差は、30万円しかありません。
さらに非課税世帯になれば、いろいろな給付金や補助金が受けられるので、もしかしたら60歳で繰り上げ受給をしたほうが多めにお金をもらえるかもしれません。医療費や介護費の自己負担割合も、世帯の所得によって1割・2割・3割のいずれかに決まります。年金額が増えたことで負担割合が上がり、繰り下げの恩恵が相殺されてしまうこともあるのです。
次に、繰り下げ中に亡くなると増額分を失うことです。繰り下げ中に亡くなると、65歳からもらうはずだった年金は「未支給年金」となり遺族に支給されますが、増額はされません。しかも年金には時効があり、過去にさかのぼって受け取れるのは最大5年分までです。
75歳から年金をもらう予定で待機していた人が73歳で亡くなると、68歳からの年金しか遺族は受け取れません。繰り下げ受給を開始した直後に亡くなった場合も、遡って年金を受け取ることはできません。
「片方繰り下げ」という裏ワザもある
ただし、2023年に「繰り下げみなし増額制度」ができました。繰り下げ待機中に病気が見つかったり介護が必要になったりして、まとまったお金が必要になったら、過去にさかのぼって年金を一括受給できる制度です。
このときは、5年前の増額率で増えた年金を一括受給できます。また、厚生年金を繰り下げると加給年金がもらえなくなります。加給年金は、厚生年金に20年以上加入し、かつ生計を同じくする65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもを扶養しているとき、年金に上乗せして支給されるものです。
繰り下げ受給をして年金額を増やしたいけれど、加給年金ももらいたい。そんな人には、おすすめの方法があります。年金には基礎年金と厚生年金がありますが、片方だけ繰り下げることもできるのです(片方のみを繰り上げることはできません)。
加給年金は厚生年金に関係があるので、基礎年金だけを繰り下げし、厚生年金は通常どおり65歳でもらえばいいのです。そうすれば、厚生年金は増額されませんが基礎年金は増額され、加給年金ももらえます。ただし、基礎年金を繰り下げると、今度は振替加算がもらえなくなります。ちなみに振替加算を利用できるのは、2026年時点で60歳以上の方だけです。


