どんなぬいぐるみも「甘噛みハムハム化」

ユカイ工学では、メイカソンで採用されたアイデアをすぐに商品化するのではなく、外部の識者に意見を聞いて回る。

その段階で、大手生活雑貨チェーンから「ねむねむアニマルズ」というぬいぐるみが人気のメーカー「りぶはあと」を紹介され、とんとん拍子でコラボが決定。話し合いを重ねながら、甘噛みの力加減を調整したり、甘噛みに変化をつけるなどして「中毒性のある飽きない作り」を実現し、2022年7月に販売された。

「ねむねむアニマルズ」とのコラボで生まれたゆず&コタロウの甘噛みハムハム
筆者撮影

「ねむねむアニマルズ」とのコラボで生まれたゆず&コタロウの甘噛みハムハム

ここから「いかに売るか」が、冨永さんの本業だ。冨永さんと開発チームは甘噛みの仕組みを「ハムリングシステム」と名付け、どんなぬいぐるみにも組み込んで、「甘噛みハムハム化」できるようにした。このアイデアも、外部の識者の話から閃いたという。

「アイドルやタレントのファンクラブを運営している人たちから、グッズの話を聞いたんです。缶バッジとかクリアファイルって簡単に作れるから、みんな同じようなモノになってしまうと。本当はもっとこだわりのグッズを作りたいけど、型が必要なモノは大量に作らないと採算が取れないから難しいと悩んでいました。その時に気づいたんです、甘噛みハムハムを横展開できるんじゃないかって」

ぬいぐるみの場合、MOQ(Minimum Order Quantity/最低発注数量)は1000匹。この程度なら、オリジナルの甘噛みハムハムを作りたいという会社もあるだろうと考えた。

ミャクミャクにも広がり、4年で7万個

その予想が、当たる。ディズニーキャラクターの「チップ&デール」やスヌーピーのキャラクター「オラフ」、2025年大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」など次々と有名キャラクターとコラボ。「甘噛みハムハム」シリーズの出荷数は、発売から4年で累計7万匹を超える大ヒットとなった。

「メインの購買層は四十代、五十代なんですよ。子育てがひと段落したお母さんが昔を懐かしんだり、ワンちゃん、ネコちゃんの飼い主が、赤ちゃんだった頃に甘噛みされたのを思い出したりするエモい商品に昇華されていて、嬉しい驚きでした」

人気マンガの『銀魂』ともコラボした
画像提供=ユカイ工学
人気マンガの『銀魂』ともコラボした

「猫舌ふーふー」は商品化まで5年

2025年7月の発売からすでに累計2万匹売れている「猫舌ふーふー」は、毎週開催されている社内のアイデア会議「妄想会」から生まれた。妄想会は誰でも参加可能で、クライアントの課題や新規プロジェクトなど毎回異なるテーマについて話し合う。

発端は2018年、飲料容器メーカー・東洋製罐の周年行事で「なにか面白いものを作りたい」という相談があったこと。それが妄想会のテーマになり、その際、冨永さんが提案したのが「猫舌ふーふー」だった。

ユカイ工学で行われている妄想会の様子
画像提供=ユカイ工学
ユカイ工学で行われている妄想会の様子

「赤ちゃんの離乳食って、電子レンジでチンするとこれでもかってくらい熱くなるんですよ。それを自分がフーフーして冷ましているときに、なんでおれがフーフーしないといけないのか、これは人間の仕事じゃなくていいって思ったんですよね。それでいろいろ調べると、子どものご飯にフーフーすると虫歯菌が移るからやりたくないという親御さんもいることに気がついて、これは絶対に需要がある、社会に存在すべきものだと感じました」

東洋製罐の担当者がこのアイデアを気に入ったことで、コンセプトモデルの製作が決定。2020年10月、容器の淵に引っかけてボタンを押すと微風が出て熱い食べもの、飲み物を冷ましてくれる初代「猫舌ふーふー」が完成した。ここで、冨永さんは「個人的にすごく好きだから、なんとか商品化したい」と動き出す。

4年連続ボツでも諦めなかった

ところが、2020年から4年続けてメイカソンで提案するも、採用されず。それを悔しく感じながらも、冨永さん自身、本体の背中に電池を入れて動かす仕組みの初代「猫舌ふーふー」の場合、電池が切れたら使われなくなりそう、電池式だと実際に食卓で使うのを躊躇する人もいそう……など課題を感じていた。