悪意ある人には「半身モード」で対応
相手の気持ちに寄り添う姿勢は尊いことですが、ひとつ注意しておきたいことがあります。それは、「世の中には、悪意を持って近づいてくる人もいる」という現実です。残念ながら、すべての人が善意や誠意で動いているわけではありません。自分を利用しようとする人、引きずり込もうとする人、攻撃してくる人もいます。
ここで求められるのは、共感の姿勢を持ちながらも、半身で聞く感覚を持つことです。すぐに心を閉ざすのではなく、かといって全開で受け入れるのでもない。いわば「片足を引いた状態で聞く」というスタンスです。とくに、次のような違和感を抱いたときは、半身モードに切り替えることをおすすめします。
・他人の悪口・噂話がやたらと多い
・「自分から何かを奪おうとしている」と感じる
・自慢やマウンティングが激しい
・こちらへの敬意や配慮が感じられない
・言動がコロコロ変わる
・「ここだけの話」が多い
・しばしば「うまい話」を持ちかける
・過剰に人を持ち上げたり貶めたりする
・否定や批判がデフォルトになっている
・被害者意識が極端に強い
・やたらと秘密主義で情報を開示しない
こうした気配を感じたときは、その場を離れる。次の約束をしない。やんわり断る――など、関係性を深めない対応が必要です。そこに罪悪感や自己嫌悪を抱く必要はまったくありません。
受け止める姿勢は大事ですが、違和感センサーを鈍らせないことも、聞き手としての成熟です。共感は大切。しかし、無防備であってはいけません。「心を寄せる」と「自分を守る」。この二つのバランスを持つことで「聞く力」はさらに磨かれていきます。
「クレーム」に正論は効かない
「それは当社の管轄外でして」「規約ではこうなっておりまして」「説明書にも記載がありまして」――クレームを受けたとき、つい正しい説明を優先してしまった経験はないでしょうか。しかし、正論を述べるほど相手の不満や怒りが強まることがあります。理由はシンプルです。相手の感情が置き去りにされているからです。
クレームの奥には、いつでも「ちゃんと話を聞いてほしい」「この気持ちをわかってほしい」「軽く扱わないでほしい」という感情が横たわっています。だからこそ、最初に必要なのは説明ではなく共感です。とくに相手の怒りのボルテージが高いときは、一度きりの共感では足りません。角度を変え、言葉を変えながら何度も寄り添う。これを私は「多重共感」と呼びます。

