相手の感情を言語化し受け止める

「さぞご不安だったことでしょう」「楽しみにされていた分、落胆も大きいですよね」「その状況なら、怒りたくなるのも無理はありません」。このように、相手の感情を言語化し、受け止める言葉を重ねることで、怒りの温度は少しずつ下がっていきます。

あるホテルで、部屋の準備が間に合わず、顧客が激怒したことがありました。最初の対応は「確認いたします」という事務的なもの。怒りは収まりません。そこで別のスタッフが「大切なオンライン会議を控えている中で、お部屋が使えないのはご不安ですよね」「それは、集中できる環境が必要ですね」と、感情に焦点を当てた言葉を重ねました。すると、声のトーンが下がり、「そうなんだよ……」と空気が変わったのです。

クレーム対応で大切なのは、事実のやり取り以上に、相手に「この人は気持ちをわかってくれている」と感じてもらうことなのです。

共感とは、相手の感情を代弁しながら受け止め続けることです。反論も弁明も正論も、最初は封印します。それらは火に注ぐ油だからです。さらに、共感は言葉だけではありません。声のトーン、表情、うなずきといった非言語も含めて、相手は「受け止められたか」を感じ取っています。怒りが鎮まって初めて、問題解決のステージに進めるのです。

案内をするホテルの女性スタッフ
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最強の切り返しは「切り返さないこと」

相手から「それは違う」「私はこう思う」と、異論や反論を受けたとき、うまく切り返せたらいいのに、と思ったことはありませんか? 

しかし、「切り返す」という発想そのものに落とし穴があります。切り返すとは、力で相手の意向を変えようとすること。切り返された相手は無意識のうちに不快感を抱き、かえって身構えてしまいます。論破目的でもない限り、切り返しなど必要ないのです。

むしろ重要なのは、反論したくなったときほど、共感モードのギアを上げることです。「そうですよね。私も、以前はまったく同じように思っていました。いや、なんなら、今でもそう感じることがあります。その気持ち、よく理解できます」。こんなふうに返すことによって、相手の気持ちが落ち着き、両者の間に一体感が生まれます。

最強の切り返しとは、「切り返さないこと」。敵対するより仲間になってしまう。反論点については、相手がこの場の安心を感じてから、慌てず丁寧に話し合っていけばいいのです。