※本稿は、山口拓朗『聞く力は最高の知性である 1を聞いて100を知る技術』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
相手への敬意を忘れない「素直さ」
断ることに苦手意識を持つ人は少なくありません。「傷つけてしまうかも」「嫌われたくない」という気持ちから、つい嘘の理由をつくってしまう。その気持はよくわかります。しかし、嘘を言えば、その場はしのげても、心のどこかに違和感が残ります。嘘が明るみに出れば、相手の信頼を損なうだけでなく、自己嫌悪という形で自分にも返ってきます。
私たちが大切にすべきなのは、「素直さ」です。素直さとは、感情のまま言葉にすることではありません。自分の本音をごまかさず、一方で、相手への敬意を忘れない姿勢のこと。これはコミュニケーションの要諦とも言えます。
たとえば、友人が「サプリメントを飲んだほうが健康にいい」と勧めてきたとします。しかし、自分はサプリメントに否定的な考えを持っている場合、ただ「効果がない」「身体に悪い」と頭ごなしに否定してしまえば、相手は傷つき、その場の雰囲気を壊してしまうかもしれません。嘘こそついていませんが、それは調和の取れた素直さとは言えません。
嘘を言わず、相手を傷つけない工夫をする
一方で、「確かに栄養を補えるという安心感はあるよね」と、まず受け止めたうえで、「自分は極力、自然な食事から栄養をとりたいと思っていて。だから、今はサプリメントを控えているんだ」と伝えればどうでしょう。自分の考えを示しながらも、相手が受け止めやすい言葉を選んでいます。
もちろん、自分の気持ちにフタをして「サプリメントは健康に良さそうだよね」と話を合わせてしまうのは、自分に嘘をついている状態です。短期的には話が丸く収まるかもしれませんが、遅かれ早かれ、その代償を払うことになるでしょう。
大切なのは、「嘘を言わないこと」と「相手を傷つけない工夫」を両立させることです。それができる人は、断るときも遠慮するときも、臆することがありません。

