80歳で20本残っているのが理想

実はこの「本当の歯磨き」はけっこう難しい。子どものときからやっているつもりでも、上手にできていない方がほとんどです。私は歯磨きには10分でも30分でも掛けたらいいと思っていますが、ある歯科医のおすすめは、1日2回、1回2分の歯磨きだそうです。

上の歯1分、下の歯1分。実は、そのぐらいの時間を掛けている人も、意外に少ない。だいたい、力を入れてゴシゴシ歯の表面をこすっておしまいです。

本当は、歯ブラシを歯周ポケットに当てて、ゴシゴシせず、軽くほじるように動かして食べ物のカスを除去するのです。奥歯が特に難しい。ほとんどの人が満足に磨けていません。時間をかけて念入りに磨きましょう。同じく上下の前歯の裏側も磨き残しの多い場所だそうです。今は、「80・20」というスローガンがあります。

80歳で自分の歯を20本残そうというのです。日本人における「80・20」の達成率は約6割です。「死ぬまで自分の歯で食べよう」ということで、これは大変いいことだと思います。セルフメディケーションで、自分の歯をきちんと守る意識を持ちましょう。

検査して数値を見るような話ではないので、やはり定期的に歯科に行って、いわゆる「大掃除」を指南してもらうのが有効だと思います。

足腰の老化よりも危ない「咀嚼力の衰え」

高齢になることの最大の問題は、「嚙めなくなること」だと言っていいでしょう。咀嚼筋そしゃくきんが弱まってくる。左右不対称に衰えます。だから嚙むときにアゴがガタガタしてくる。歯だけでなく、嚙む機能が衰えます。

がく関節と咀嚼筋が衰える老化のことを「オーラルフレイル」と呼びます。こちらのほうが足腰の老化よりも危ない。命に直結します。現代人はそもそも嚙まなくなっています。丸飲み時代です。

ハンバーガーなど、軟らかいものを食べるようになってからその傾向が進んで、今では「飲むカレー」とか「飲むサラダ」とかまで進んできました。こんなものばかり食べていると、早死にします。「オーラルフレイル」に力を入れる自治体や歯科医が増えています。

私たちは嚙むことで、顎関節から骨伝導を通じて脳を刺激しているのです。その情報を受けることで、脳が「今食べてるぞ、これから内臓の出番だぞ」と指令を出し、内臓に準備を促すのです。

せんべいを食べる高齢女性
写真=iStock.com/pain au chocolat
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