よく噛まない食事は胃腸を疲れさせる
現代人は平均で4、5回しか嚙まずに飲み込みますから、内臓の態勢が整わないうちに食べ物の塊を体に入れてしまって、胃腸に負担を与えているのかもしれません。また、脳に刺激が少なくなるほど、唾液も出なくなります。
物を嚙めば、反射的に唾液が出てきて、アミラーゼなどで殺菌、消化が始まります。口の中ですでに胃腸で消化吸収されやすいように下処理をしているのです。また、さまざまな雑菌を殺しているリゾチームという酵素は、嚙むことで活性化することが知られています。
私のおすすめする貝原益軒の『養生訓』にも、よく嚙むことの重要性がはっきり書かれています。益軒は、「食物はよく嚙んで細かくし、唾液とよく混ぜて飲み込むべきだ」「嚙まずに飲み込むと胃に負担をかけ、病のもとになる」「急いで食べるのは大いに害がある」と述べています。
江戸時代の人々は嚙むことの大切さを知っていたようで、よく嚙んでいたという記録があります。ご飯でもおかずでも口に入れたら、20回、30回と嚙んでいたそうです。小さな頃から親に厳しく言われているわけです。
噛む力だけではなく、舌も鍛える
よく咀嚼をすることでたくさん唾液が出ます。唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺の3つから出るようになっています。健康長寿に重要な唾液が、咀嚼力が衰えるとともに減ってくるのです。
年寄りは口が乾いています。口を開けて眠ってしまってもよだれなんか出ません。口が乾くほどに雑菌が入りやすくなりますから、口の中は常にウェットでないといけません。
切る前の牛タンを見ると、筋肉の塊だとわかります。牛はいつも草を嚙んでいます。だから自然と舌筋隆々になっているのです。嚙めば、舌も鍛えられるのです。
では人間はどうすればいいかというと、普段から舌を回す体操をするのです。歯の本数も大切ですが、舌の筋力維持も大切です。命に直結します。「チェッ」とやる舌打ちも体操になります。ただ、これはあまり人前でしないほうがいいでしょう。「カラオケ」が超おすすめです。
口を動かすこと自体も、口腔ケアなのだ、と声を大にして言っておきます。

