無料から収益化への設計思想の転換
ここまでのLINEの構想を整理すると、無料という広い入り口から利用頻度の高いメッセージや通話機能をユーザーに定着させ、コマースやサブスクなどの収益源を育てていく設計思想の転換が見て取れる。国内最大級の利用者基盤を持つ企業が本格的にマネタイズに乗り出すインパクトは相当なものだ。
一方で、忘れてはならない側面がある。LINEはこの15年で、家族や友人との日常的な連絡はもちろん、災害時の安否確認や行政手続きの通知など、国民生活を支える通信インフラへと成長してきた。携帯の電波が届かない災害時に衛星通信でLINEを使えるようにする「サテライトモード」などは、災害大国である日本において、まさに命綱とも言える重要機能だ。
強固なインフラを維持していくために収益化へ注力することは、巡り巡ってユーザーの利益にもつながるため、むしろ歓迎すべきことだろう。しかし、子どもからシニアまで幅広い年代が利用する巨大プラットフォームとなった今だからこそ、同時に「誰もが安全に使えること」への配慮を強く求めたい。
シンプルなLINEの復活を求む
かつて発展途上国向けに提供されていた軽量版アプリ「LINE Lite」(2015年提供開始、2022年サービス終了)のように、メッセージ機能に絞ったシンプルなLINEを、子どもやシニアといった層に向けて提供することはできないだろうか。あるいは、アプリ内の機能を制限できるオプションの追加でも構わない。
実際、筆者は周囲やSNSなどで「子ども用にもっと機能を絞ったシンプルなLINEが欲しい」といった保護者からの要望をしばしば耳にする。
LINEの機能が拡張し、スーパーアプリ化が進むほど、ITリテラシーが必ずしも高くない層にとっては複雑化していく。それは、意図しない課金や情報の混乱、トラブルに巻き込まれるリスクの増加を意味する。
収益化の広がりと並行して、「つながる」というLINEの原点だけを必要とする人々への選択肢も用意してほしい。実現へのハードルは高いのかもしれないが、日々の生活をLINEに支えられてきた一利用者の小さな願いとして受け止めていただければ幸いだ。

