おにぎりにも注目が集まっている
日本とアメリカの違いといえば、身体の大きさによる食べる量の差もある。たとえばシャリ玉にしても、日本人にはちょうどいいサイズだとしても、アメリカ人にはもの足りないかもしれない。
「それは、あります。しかし、当社の寿司ロボットはシャリの量を調整できるようになっています。大きいシャリ玉が好まれるようなら、それに合わせればいいのです」
寿司ロボットやのり巻きロボットでアメリカの市場を開拓し、さらに最近ではおにぎりロボットの需要も増えそうな気配もあるという。2025年3月期には、アメリカのローカルスーパーを中心に約3300店舗がおにぎり用の手押し成型器を導入した。
ただし、中身は日本のおにぎりとはだいぶ様子が違う。牛肉やチキン、シュリンプといったアメリカ仕様の具材を混ぜ込んだ「混ぜ飯おにぎり」が主流だという。「おにぎりの需要はこれから絶対あります」と、谷口社長は断言する。
谷口社長は、こうも語った。「必ずしも日本のオリジナルのものじゃなくていいと思っています。日本だって、パスタはナポリタンから始まっているんです」。ローカライズされた米飯食が定着すれば、やがて本格的な日本式のおにぎりや寿司への需要も広がっていく――鈴茂器工はその流れを、機械で下支えしようとしている。
「日本の寿司企業」が海外進出するほど収益があがる
アメリカの寿司市場において現在、鈴茂器工にとっても有利になりそうな動きがある。そこに日本資本も積極的に参入していることだ。そうした日本資本は、日本国内でも寿司に関係したビジネスを展開している。
「国内で当社の寿司ロボットを使ってもらっているところは、アメリカでも間違いなく当社製品を使ってくれています」
寿司ロボットのシェア8割の強みで、最初に自社の機械を選んでもらえる「ファースト・コール・マシナリー」が実現されているのだ。ただし、声がかかるのを待っているだけでは、鈴茂器工の売り上げの伸びは大きくならない。ファースト・コール・マシナリーだけでは、業績を伸ばす要素としては足りない。
さらに伸ばしていくためには、ファースト・コール・マシナリーだけに頼らず、積極的に働きかけていくことで寿司市場を拡大していく努力が必要になる。日本だけでなく、米飯食を広めていくという創業者理念の進化と深化が必要なのだ。もちろん、鈴茂器工の動きははじまっている。
「日本産米を使っているところもありますが、そういうところは少なくて、多くは現地のカリフォルニア米などを使っています。日本とは違う炊き方などのノウハウが必要なわけです。そして欧米の特徴として、冷凍食品の売場では5度以下で保存する規則があるので、その条件のもとでコメの表面が乾かない工夫が必要です」
自前で工夫するところもあるが、鈴茂器工としても相談を受ければ応じる。わからないところがあれば、炊飯器メーカーに問い合わせて聞いてでも伝えるし、場合によっては協力企業を紹介したりもするという。それができるのは、これまでのビジネスでつながってきた圧倒的なネットワークがあるからだし、そうした情報の重要性が社内で徹底されているからでもある。
もしも情報の重要性に気づかず、せっかく聞いても右から左に流していれば、役立てることができない。情報を収集し、積み重ねて努力を重ね、それをビジネスで役立てている。それが、アメリカでの鈴茂器工の事業急伸を支えている。

