中曽根氏「男児プレッシャー」発言の顛末
自民党の中曽根弘文憲法改正実現本部長が富山県高岡市で行った講演の内容が物議をかもしている。
中曽根氏は、自民党の参議院議員で、かつての首相、中曽根康弘氏の子息である。康弘氏のほうは衆議院議員だったので、選挙区が異なり、厳密には「世襲議員」とは言えない。だが、康弘氏が首相だったときに初めて参議院に出馬しており、その威光を背景にしていることは間違いない。
中曽根弘文氏は、講演で愛子内親王が天皇に即位することは「あり得ない」とまっこうから否定した上、「愛子さまが天皇になったら、結婚する人もいない」と述べ、さらには、天皇になった愛子内親王には、「男子を産まないといけないという、すごいプレッシャーがある」と指摘した。
現在、国会では皇族数の確保をめぐる議論が進められ、皇室典範の改正へむかっている。ただ、高市首相の国会運営をめぐって野党からの反発は強く、与野党対立は激化している。今国会の会期は7月17日までしかない。
皇室典範の改正をめぐっては、当初、「静謐な環境」のもとで審議を進めるとされていた。だが、今や、とてもその状況ではなくなっている。与野党のなかに改正案そのものに対する反対意見も少なくない。
しかも、審議が進めば進むほど、国民の間では、女性天皇や女系天皇を認めない改正の動きに対して批判が強く唱えられるようになり、「愛子天皇」待望論は、かつてないほど高まっている。
国民を相当バカにした発言
中曽根氏は、そうした想定外の現状に危機感を抱き、なんとか“待望論”を鎮静化させようと、そうした発言を行ったのかもしれない。
その後、中曽根氏は、党本部で記者団に対して「言葉が適切でなかった点があった。反省している」と述べたものの、国民はそこに、皇室典範の改正に邁進している自民党の議員の「焦り」を見いだしたはずである。
講演のなかで中曽根氏は、今の国会での議論で女性天皇のことが議題に挙げられていないにもかかわらず、それに触れ、「人気投票ではない。国家の天皇陛下を決める皇位継承をどうするかの議論であり、冷静に法律にのっとって論議しないといけない」と強調した上で、「まず法律をしっかり国民に知っていただかないとおかしな方向に議論が行ってしまう」と語っていた。
つまり、「愛子天皇」待望論は、国民の法律に対する「無知」にもとづいているというのだ。その発言自体、国民を相当にバカにしたものである。
皇室典範改正の推進論者のなかには、国民の多くは女性天皇と女系天皇の区別ができていないと発言することが多い。これも、国民をバカにしたものである。
これだけ長く論議が行われ、それが注目されているわけだから、国民はその違いをはっきりと認識している。その上で、女性天皇だけではなく、女系天皇を容認しているのだ。むしろ、政治家には都合が悪いかもしれないが、女系での継承を望んでいるのかもしれないのである。