皇族数確保をめぐる皇室典範改正が最終局面に入った。政府は月内にも改正案を閣議決定する見通しだ。皇室史に詳しい島田裕巳さんは「この改正案は、『女性・女系天皇の実現阻止』という政治家の最終目的を巧みに隠している」という――。
一般参賀で日の丸を振る人々
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あまりに問題が多い皇室典範改正案

皇室典範の改正への動きは最終段階を迎えている。

ただ、いろいろと議論があり、最後どういう形でまとまるのか、それが見えない。

6月24日に公表された衆参両院による改正案の要綱でも、「旧宮家からの養子」については例外規定で行うとされた。この案には根強い反対があり、実際、これまでも述べてきたように、そこにはあまりに問題が多いからである。

では、「女性皇族の結婚後の身分保持」についてはどうだろうか。こちらも実は同様に、問題はあまりにも多い。

現在の皇室において、女性皇族の果たす役割は大きく、その活動に対する注目度は高い。とくに愛子内親王が大学を卒業し、積極的に公務を果たすようになったことで、よりいっそう注目されることが多くなった。

日本フィルハーモニー交響楽団の特別演奏会鑑賞のため、会場に到着された愛子さま=2026年6月22日午後、東京都港区(代表撮影)
写真提供=共同通信社
日本フィルハーモニー交響楽団の特別演奏会鑑賞のため、会場に到着された愛子さま=2026年6月22日午後、東京都港区(代表撮影)

女性皇族であれば、結婚したら皇室を離れてしまう。こうした議論が開始されたのも、それを危惧する声が高まったからである。結婚後も皇族としての活動を続けてほしい、というわけである。

したがって、従来それは、結婚後の女性皇族が新たな宮家を営むようになる、つまりは「女性宮家」を創設することとして理解されてきた。

ところが、今回の改正案には、女性宮家という言葉はまったく登場しない。その代わりに、「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持すること」という言い方がされている。女性宮家はどうなってしまったのか、そう思う人たちもいることだろう。

「女性宮家」でなく「身分保持」とした戦略

「女性宮家」であればイメージがしやすい。だが、「身分保持」となると、いったいそれが何を意味するのか、ひどくわかりにくい。

そこには、今日の形での皇室典範の改正を推し進めようとする政治家たちの巧みな戦略が隠されている。

それも、全体の構図が、「いかにして女性天皇、女系天皇の実現を阻止するか」におかれていながら、その最終目的を隠しているからである。

皇室の制度史に詳しい所功ところいさお京都産業大学名誉教授も、朝日新聞の紙上で、改正案に不適切な点が多いのは、「あえて本心をぼかしながら、(男系男子に固執する改正の)目的を遂げようとする底意が透けて見える」からだと指摘している。もっともな指摘である。

女性宮家の創設が提言されたのは、民主党の野田佳彦政権の時代に「皇室制度に関する有識者ヒアリング」が開かれ、2012年10月にそれがまとめられたときだった。

そのときは、女性宮家の創設とともに、女性皇族が結婚して皇室を離れても新たな称号を使うなどして皇室活動を続ける案が提言された。そこでは、旧宮家からの養子案はまったく示されていなかった。

その後、自民党が政権に復帰し、安倍晋三政権の時代になると、保守派の反対が強い女性宮家創設は棚上げされてしまった。それが、女性天皇や、さらには女系天皇へ道を開くことになるからだというわけである。

ここから動きが怪しくなる。