人生の転機はいつ訪れるかわからない。2016年、ロックバンド「RADWIMPS」による映画『君の名は。』の主題歌「前前前世」が世界的に大ヒットする。そんな中、持病により休養中のドラマー・山口智史さん(41)さんは強い孤独を感じていた。「自分が壊れてしまうかもしれない」。そう感じた山口さんが向かったのは意外な場所だった――。(第2回/全3回)
RADWIMPSのドラマー山口智史さん
撮影=高須力
RADWIMPSのドラマー山口智史さん

無期限活動休止中に届いた「複雑な報せ」

2015年、RADWIMPSのドラマーとしての活動を無期限休止した山口智史さんは、たまたま小旅行で赴いた葉山で、太平洋越しの富士山の光景に一目惚れし、「葉山が俺を呼んでいる」と宣言。一家で東京から居を移すこととなった。

心身を患い活動休止に追い込まれた自分を癒やすためではあったが、移住は家庭の経済状態にも寄与するものだった。

それまで暮らしていた東京都内の住まいから葉山に移ることで、家賃を3分の1に抑えることができたのだ。本人は述懐する。

「いきなり無職になってしまって、次の職に就くメドも立っていなかったので、生活レベルを落とさなければいけないとは気づいていました」

新しい住まいを整え、子どもたちの学校の手続きに奔走したりと、やるべきことは目の前にたくさんあった。奔走することで気が紛れるのは、心身に傷を負った山口さんには幸いだった。

ただ山口さん自身は、停滞していた。次に進むべき道を見出せぬまま、無為な日々を送るばかり。失われた精神の均衡をなんとか取り戻そうとする、ただそれだけの時間だった。

だが、そんな静寂をかき乱すような出来事が、容赦なく襲いかかってきた。愛するバンドRADWIMPSの、あまりにも巨大な成功の報せだった。