いまソニーが再び輝いている。2026年3月期、ソニーグループの営業利益は1兆4475億円と過去最高益を更新。その7割は、ゲーム・音楽・映画のエンタメ3事業だ。電機メーカーだったソニーは、なぜここまで変われたのか。転換の種を蒔いたのは、1995年から10年間トップを務めた出井伸之だ。「インターネットは隕石だ。このままだとソニーは恐竜のように滅びるぞ」と警鐘を鳴らし、パソコン「VAIO」やゲーム機「プレイステーション」を発売。だが当時は「ソニーを壊した経営者」とOBらから批判を受け、最後は社外取締役から勇退を勧告された。
児玉 博(こだま・ひろし)●ノンフィクション作家。1959年生まれ。2016年、『堤清二「最後の肉声」』で第47回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。著書に『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』(小学館)など。
「出井さんは“世界最悪の経営者”とまで評され、社内でも抵抗を受けていた。けれど実際に会ってみると、薔薇のような華がある人で、思考も柔軟。なぜそこまで貶められてきたのか疑問に思った」
出井のサラリーマン人生は、報われない日々の連続だった。パリでは上司も部下もいない。孤軍奮闘で、5年かけて現地法人を立ち上げた。それなのに、帰国後待っていたのは物流センターへの配置転換。さらには、後の社長・大賀典雄への発言が逆鱗に触れ、役職を解かれる。それでも出井は異動先で得た知識を掛け算し、未来を読む力に変えていった。やがて文系でありながら、自らの意思で理系の牙城に飛び込んでいくようになる。
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(文=田中健介(本誌編集部) 撮影=宇佐美雅浩)


