サッカー元日本代表選手のセカンドキャリアはさまざま。解説者や指導者、タレントとして表舞台に立つ人もいれば、裏方としてクラブを支える人もいる。1997年、“ジョホールバルの歓喜”を演出し、その後、複数のクラブで活躍した“野人”は現在、南葛SC事業本部長としてクラブ経営というピッチを駆け回る日々だ。
岡野氏が最後に所属したガイナーレ鳥取でユニフォームを脱いだのは2013年。タレントになる誘いもあったが、ガイナーレの塚野真樹社長の熱烈なラブコールを受けてGMとしてクラブに残った。「パソコンは使えないし、そもそも何すりゃいいかわからない。選手がいきなりナンバーツーになったからフロントのみんなも警戒してる。事務所に初出勤して仕事を聞いたら、『朝一に掃除でもしとけば』と冷たく言われました」
それでも天性の明るさを活かして、GMの大事な仕事の一つであるスポンサー営業で活躍。本書には、フロントとしては新人だった岡野氏が現役時代さながらの突破力でビジネスの壁に挑戦する様子が綴られている。
企業に片っ端からアポを取り、頭を下げて回る日々。慣れない仕事に戸惑いもあったが、選手時代から意識してきた2つのことが活きた。一つは謙虚さだ。「謙虚さは挨拶に出ます。無意識にでも自分が偉いと思っている人は自分から挨拶しないでしょう。だから、まずは誰に対しても挨拶です。『こんにちは』でも『おつかれさまです』でも、何か挨拶を交わせばそこから会話が始まるし、損することは何一つない」
もう一つは、負けたときほど元気に振る舞うことだ。
「勝ったときはみんな自然に喜んでくれます。負けたときに元気を出してまわりを明るくできるかが大事です」
25年には南葛SCの事業本部長、そして古巣である浦和レッズのブランドアンバサダーに。フロントから頼まれた仕事はNGなしで引き受ける。南葛SC事業本部長としての初仕事は、地域の豆まき会で青鬼に扮すること。まわりが明るくなることなら躊躇しないのが岡野流だ。
本書には岡野氏と関わったクラブ経営者らのインタビューが収録されている。その一人、ガイナーレ鳥取の塚野社長は「僕は、岡野雅行に、浦和レッズの社長になってもらいたい」と話していた。「電車の中で原稿確認してたら、やべぇ、泣いちゃうからこれ以上は読めねぇってなっちゃって」
そう熱く語る様子に、岡野氏が人に応援される理由が垣間見えた。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年6月12日号)の一部を再編集したものです。
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