ピンク一色の装丁に「愛」という文字が大きく躍る。男女の機微に疎い人間には縁遠い本かと思いきや、これは恋愛の指南本などではない。

トミー
トミー●1978年生まれ。名古屋大学医学部卒。医師免許取得後、名古屋大学精神科医局入局。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。著書に『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)など。

精神科医であり、著書累計60万部を超える人気作家Tomyさんだが、本書の執筆は一筋縄ではいかなかった。

「3年前、編集者から『愛の本』の執筆依頼を受けました。書いたことのないテーマで困ったけど、『どうしてやろうか』とやる気も湧きました」

あえて締め切りは設けなかった。編集者から愛についての質問100個が届き、まずはお悩み相談の原稿10万字ができた。しかし大きく改稿し、3年がかりで完成した。

「自分の愛の歴史を観察し直して、愛のヒントを分析する手法で1章を作ることにしました。いつかはしっかり向き合い、書きたいことでした」

発想を得たのは、人気漫画『チ。――地球の運動について――』(小学館)。天体を観察、分析した人々が時代を超えてバトンをつなぎ、地動説を確立したのと同じアプローチだ。

その1章には、父親を亡くした寂しさを埋めるために始めたブログからTomyが誕生したこと。パートナーY君との衝撃的な出会いなどが優しいタッチで描かれる。そしてゲイを公表している筆者は、人生最大の喪失を経て家族、恋人、友人の関係を超えた「愛とはなにか」にたどり着く。

愛情の育て方で役立つことは、職場の部下との関係改善にも生かせる。例えば“I”メッセージ。「私はこうだと思う」と「私」を主語にして意見を伝えると、相手に受け入れてもらえやすい。

とはいえ、おじさん世代は苦手そう。そんな時は「お前がこんなことすると俺は悲しい、こうしたら俺はうれしい。相手の良い所と悪い所をセットに、率直に伝えてください」。

『愛の処方箋』光文社/1600円+税

そして、Xフォロワー39万人の精神科医の助言は人間関係全般に向かう。距離感こそが大事で、ギスギスしているなら適切に離せばうまくいく。

(インタビュー・文=富岡悠希 撮影=遠藤素子)

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