「この人物は本当にこんなことを言ったのだろうか?」

歴史小説を読みながら、ふと思ったことはないだろうか。歴史小説の大家である佐藤賢一氏によると、「ある人物がこう思った、こう言ったという記述は、基本的に全部ウソ」。

佐藤 賢一
1968年、山形県生まれ。93年「ジャガーになった男」で、小説すばる新人賞を受賞して作家デビュー。99年『王妃の離婚』で直木賞、20年に『ナポレオン』全3巻で司馬遼太郎賞を受賞。

そのウソをいかに信じ込ませるかが、作家の腕の見せ所だ。「その状況なら、確かにそう思うだろうな」と読者に共感してもらうため、その時代の文化や政治、宗教については徹底的に史実に基づいて描き込むのだという。つまり、ウソの周囲を真実で固めるのだ。

(インタビュー・文=堀田芳恵 撮影=大崎えりや)