デビュー作『ぬくもりの旋律』で静岡書店大賞を受賞した岡田真理さんの第2作。プロ球団のスカウトとして働く真柴瑞稀を主人公に「選択と後悔」という普遍的なテーマが描かれる。

瑞稀は、ドラフト会議に向けて大学野球で活躍する笠谷蒼佑に目をつけるが、「プロにはいかない」と断られてしまう。しかし、瑞稀は元警察官としての洞察眼で、笠谷の言葉は本心ではないと考える。そして笠谷をドラフト上位に推すが……。

岡田さんはこれまでスポーツライターとして、夢をかなえた数多くのアスリートと仕事をしてきた。しかし、夢をかなえた人がすべて幸せになるとは限らない。

岡田 真理
岡田 真理● 1978年、静岡県生まれ。立教大学卒業後にプロアスリートのマネジャーを4年間務める。退職後、スポーツライターとして活動し、プロ野球、格闘技、オリンピック競技のアスリートを取材。2024年に小説家デビュー。

「あるとき、元プロ野球選手と一緒にドラフト会議をテレビで見ていたのですが、指名されて喜ぶ選手を見て彼は『笑顔でいられるのは今日まで』と言いました。その言葉がずしんと響いたのです」

岡田さん自身も、プロ1年目の選手に何人もインタビューしてきた。そのときに口を揃えて言うのは「えらいところに来てしまった」ということだった。夢の舞台に立ったとしても、本当に活躍できるかどうかわからない。技術だけではなく、本人の精神性や縁、運にも左右される。これは野球選手に限らず、転職など新しいチャレンジをした多くの社会人に共通する。夢をかなえるために「選択」したにもかかわらず、「こんなはずじゃなかった」と後悔することはあるだろう。

「そのときに『自分の選択が間違っていたのではないか』と考えるのですが、答えは出ません。大事なのは“何を選択したか”ではなく、“どう折り合いをつけるか”なのです。挫折しても、自分の中で納得して次のステップに進めるなら、その選択は間違いではなかったはずです。物語では、自分だけで抱え込んでしまう登場人物が、他者によって心を溶かされていく様子を描きました。人を頼る、視点を変えることで救われる部分は必ずあると思います」

眩光の彼方
岡田 真理『眩光の彼方』祥伝社/1800円+税

夢を見つけることは若者だけの特権ではない。50代、60代でも、再チャレンジできる時代になっている。

「私自身、作家としてデビューしたのは40歳を過ぎてからです。年齢を重ねてからのチャレンジであれば、うまくいかなくても、その過程を楽しむ余裕があるはず。夢を持ち続けることで、若い世代とも共鳴できるでしょう」

夢の実現だけがゴールではない。その先にある「納得」と「生き方」こそが、本当の幸せを決める。本書は、現代を生きるすべてのビジネスパーソンへのエールだ。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年1月30日号)の一部を再編集したものです。

(インタビュー・文=向山 勇 撮影=小西範和)

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