デキる人ほど仕事に追いかけられる「しんどさ」の正体とは

いつも時間内に仕事が終わらない。部下の成績を上げなければ……。そんなとき、あなたは時間管理術のハウツー動画を見たり、マネジメントの本を手に取ったりするだろう。

品川さんは問う。「それを10年、20年続けて、根本にある問題が解決しましたか?」と。

耳の痛い言葉だが、時間や仕事に追われるのは能力不足だからではない。多くの現代人が「追われている感覚=しんどさ」を感じている。その背景にある構造が資本主義だ。

混雑した未来的な通りを歩くビジネスマン
写真=iStock.com/gremlin
※写真はイメージです

「私の仕事である歴史調査の一つで、ポスト資本主義について調べることになったのが執筆のきっかけです。これから本当の意味で豊かに生きるためには、『資本主義との距離感』が大切なのでは――そんな考えがふと浮かびました」

歴史を学ぶだけではなく、「資本主義が自分の人生にとって何なのかを理解することが大事」だと品川さんは言う。

「しんどさの背後に隠れている資本主義の構造を解きほぐして理解することで、自分がとらわれているものの正体に気づく。遠回りでも、問題を解決する糸口はそこから見えてくるはずなんです」

本書は、資本主義の構成要素を6つに分解し、それらが現代人を追い詰める仕組みをひもといていく。その過程で、カギとなる哲学者や思想家の言葉が紹介され、私たちの理解を助けてくれる。資本主義に近づきすぎるとしんどいが、遠ざかりすぎても生きていけない。読者は「ちょうどいい距離感」を保つ方法を探しながら、人文知の神髄を味わうこともできるのだ。

本書は作り方もひと味違う。品川さんはネット上に“公開編集室”を設けて参加者を募り、本ができるまでの全工程を共有し、活発に意見交換をしながら執筆を続けた。

品川皓亮『資本主義と、生きていく。』大和書房
品川皓亮『資本主義と、生きていく。』大和書房

「自分だけで考えるよりも、ほかの人と一緒に考えたほうが絶対いいものになるという確信がありました。書きかけの原稿はもちろん、タイトル決めの過程や編集者さんとのミーティングも公開しました」

品川さんは、草稿につけられたコメントのすべてに返信し、寄せられた意見の7割ほどを原稿に反映させたという。

(インタビュー・文=大塚陽子)

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