「取材したメンバーがみんな会社、会社って呼ぶんです」

年間収益は推定50億円。メンバーは約2000人。完全歩合制で、トッププレイヤーの月収は1000万円を超える。違法スカウト集団「ナチュラル」の内部に切り込んだ清水將裕氏の言葉だ。NHK報道局で25年間、事件取材の最前線にいた清水氏は2024年に独立。本書は独立後初の著作だ。

ナチュラルは女性を風俗店に紹介し、その稼ぎの約15%を手数料として受け取る。総務課、プロ課(警察対策)、防衛部といった部署制を持ち、勤怠管理アプリや研修動画まで備えている。清水氏の目を引いたのは、この組織に早慶クラスの大学生が次々と加入している事実だった。

「彼らは大金持ちになって豪遊したいわけじゃない。意外にみんな安定志向です。ただ、普通の会社に入って時間をかけて課長になるというタイムパフォーマンスに耐えられない。それなら今バッと稼いで、貯まったら起業すればいい、という発想。安定志向の裏返しで犯罪組織を選んでいる」

暴力団が擬似的な家族関係と義理人情で結束するのに対し、ナチュラルのメンバーを縛っているのはカネと規則だけだ。大きな暴力装置は内部に持たず、必要なときに暴力団に「外注」する。金の流れは銀行口座も電子決済も使わず、現金で管理する。デジタルの時代にアナログで足跡を消す、徹底した合理主義だ。

清水氏はこの組織を単なる犯罪集団として告発するつもりはないという。

「やっていることは、昼の人材紹介業を夜でやっているようなもの。ナチュラルだけを潰しても、次が出てくる。なぜこれが生まれるのかを、背景も含めて社会全体で考えないとダメだと思っています」

NHK時代からナチュラルを追い始めたが、当時は周囲にも警察にもほとんど関心を持たれなかったという。

清水將裕、日本橋グループ*『捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』(講談社)
清水將裕、日本橋グループ*『捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』(講談社)

「犯罪は世の中の最先端なんです。ツールも稼ぎ方も、法の網をくぐる知恵も。常に法律が後追いになる。だから犯罪を取材していると、社会の空気の変化が一番よく見える」

本書の取材では、現役メンバーだけでなく、スカウトを介して風俗業界に入った女性たちにも話を聞いている。歯科衛生士からソープ嬢へ転じた女性、美容整形に数百万円を注ぎ込むデリヘル嬢。彼女たちもまた、自分なりの合理性でこの世界を選んでいた。タイトルの「捕食」は、その連鎖を指している。

(インタビュー・文=本誌編集部 撮影=髙須 力)

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