イデオロギーを出したから負けたのか

総括はその「最大の敗因」には一切言及せず、中道が「対立軸が現実に即したものに変容しているのに、そこに対応しきれずにイデオロギー対立を前面に出した戦いに終始した(から負けた)」ことを強調することに苦慮している。それが前述した「リベラルへの忌避感」に関する言葉の数々である。

だが待ってほしい。いったい、中道の選挙戦のどこに、イデオロギーを前面に出した戦いがあったというのか。むしろ選挙戦に入る前に、安全保障や原発などをめぐり「立憲が譲る」形で「現実路線に転換」した印象の方が、有権者にははるかに強いのではないか。しかも総括はその方針を高く評価し「今後も堅持していくべきである」と書いているのだ。

だったら、なぜあのように惨敗したのか。全く意味が分からない。

イデオロギー問題と同様に、野党側を長くいたぶり続けているのが「野党は『批判ばかり』批判」である。総括にもやはりその記載があった。いわく「『政権批判が中心の従来型野党』から『政策論争重視の建設的野党』へ」という、耳にたこができそうなお決まりの言葉である。

三宅坂ビル
三宅坂ビル(2023年6月撮影)(写真=Beryllium Transistor/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

王道の選挙戦から逃げた

2021年の衆院選で立憲が公示前議席を割った時もそうだった。選挙後の野党第1党の議席としては倍増に近い戦果を残したにもかかわらず、立憲は選挙結果を惨敗であるかのように受け止め「批判ばかりの姿勢が批判された」として「提案型野党」という無用の路線見直しにひた走った。結果として立憲は、国会での存在感が全くなくなってしまい、コアな支持者の信頼を低下させた上に、政権の選択肢となる野党を求めた非自民系無党派層の大量離反も招き、半年後の参院選で本当に大敗してしまった。

そんな失敗をまた繰り返そうというのか。

中道の敗因とはつまり①「自民党とは異なる『目指す社会像』を堂々と掲げて政権獲りに挑む」ことから自ら逃げて、少数政党が陥りがちな「減税ポピュリズム」に安易に乗ってしまった、②「現実路線」を過剰に強く掲げ、結果として自民党との差別化の機会を失った――の2点に尽きると思う。要は「野党第1党としての王道の選挙戦から逃げた」ということだ。選挙戦術などのあれこれは、これらに比べれば些末なことでしかない、と言っていい。