「測れない現場」はAI時代に生き残れない
ここからが、本稿の決定的なメッセージである。
本連載第1回〈「日本はAIで完敗」は大間違い…米国が100兆円投じても手に入らない、ヤマトやトヨタが持つ「最強の逆転カード」〉、第2回〈日本が誇る最高精度のロボットはなぜ中国の量産型に負けたのか…マスコミが報じない「日本製造業の真の問題」〉で論じた通り、フィジカルAI時代の競争優位は「学習し続ける現場」に蓄積される。そして現場での学習を成立させるのは、その現場を「測る」能力である。
ここで決定的な視点を提示したい。
フィジカルAI時代、測定・検査・センシングは「コスト」ではなく「資産」になる。
これまでセンサーは、品質管理のためのコストだった。製品の不良を検出するため、工程の異常を見つけるため、設備の状態を監視するため――これらはすべて「不良を出さないためのコスト」と捉えられてきた。
しかし、フィジカルAI時代、それは反転する。
センサーが収集する1次データは、ヒューマノイドや産業用ロボットや自動化システムが学習するための「燃料」になる。工場内の微振動、ワークの微細なズレ、工程の微妙な不具合――これらは「不良を出さないために監視するもの」から、「ロボットが学習する素材」へと役割を変える。
つまり、センサーは「コストセンター」から「資産形成装置」へと変貌する。
ロボット1000万台時代の「目」を握るキーエンス
ここで本連載第1回の論点「学習し続ける現場」が決定的に重要になる。現場が学習し続けるためには、現場を高解像度で測り続ける必要がある。測れない現場は、学習できない。学習できない現場は、フィジカルAI時代の競争に勝てない。
そして「測る」ことの頂点にいるのが、キーエンスである。
具体例で示そう。キーエンスのロボットビジョンシステム(マシンビジョン、機械の目)は、国内外の産業用ロボットメーカーに直結接続が可能である。ファナック、安川電機、ABB、KUKA――どのメーカーのロボットでも、メーカー名を選択するだけで、キーエンスの「目」を装着できる。3Dロボットビジョンの「3D VGRシリーズ」は、4つのカメラで死角のない画像を生成し、ワークの位置や向きによらず安定した物体認識を実現する。
これは何を意味するか。ヒューマノイドや産業用ロボットが世界で量産されればされるほど、それらに搭載される「目」の市場が拡大する、ということだ。テスラOptimusが2027年からテキサスで年間1000万台量産を始めれば、AgiBotが累計1万台から年間数万台規模に拡大すれば、Unitreeが上海STAR市場のIPOで調達した資金で量産能力を倍増させれば――それらすべての「目」の供給先候補に、キーエンスは立っている。

