コメの値段が元に戻らない理由

減反の目的は、主食用のコメを潜在生産力以下に減産することで、その価格を高く維持することである。しかも、鈴木氏は来年産の主食用のコメを30万トン以上減産することを表明している。

主食用のコメの値段は下がらない。これこそ減反に他ならない。

市場では、コメがどれだけ生産されても必ずそれに見合った需要が存在する。キャベツが卸売市場にどれだけ供給されても必ずさばけるのと同じである。市場では常に「需要に応じた生産」なのだ。

違うのは価格である。供給が多ければ下がるし、少ないと上がる。

「減反=生産調整」とは、政府が関与しないと1000万トン生産されるものを、補助金と指導で市場に介入し、望ましい米価水準を達成できるよう“一定水準”に減少させることである。例えば1000万トンのコメの潜在生産力があってそのまま生産すると低い米価(図では7000円)となる場合に、補助金を使って1000万トンから生産量を(例えば700万トンに)制限して米価を(1万5000円に)高くするのが減反である。これを農水省は勝手に「需要に応じた生産」と言って、国民を騙してきたのだ。

【図表】いつも「需要に応じた生産」
図版=筆者作成

マスコミも騙されなくなった

私は、マスコミが鈴木氏の主張を鵜呑みにするのではないかと恐れていたが、杞憂のようだ。

4月10日の京都新聞社説は、「食糧法の改正案 コメ農家の意欲そぐな」と題して、次のように主張している。

「令和の米騒動」の反省を踏まえた増産方針を覆し、なぜ再びコメ作りに制約を課すのか。
政府が、コメを「需要に応じて生産する」と明記した食糧法改正案を国会に提出した。
過剰生産を抑えて、価格の下落を防ぐという。だが人口減で長期的には需要が伸びにくいとされる中、実質は1970年代から続けた「減反政策」の恒久化を宣言したようにしか見えない。

農家、消費者ともに納得でき、持続可能な政策といえるのか。品質や生産性の向上と販路開拓に注力する農家からは、自主的な努力を妨げかねないとの声も出る。

鈴木憲和農相は「従来のコメ需要の減少を前提とした生産調整に関する規定を廃止する」とも述べたが、詳しい説明はない。コメの需給や価格の動向に国がどう関わるのか、曖昧なままだ。国会でただしてもらいたい。(中略)
供給の過剰を極度に恐れるのでなく、不足を防ぐことに重点を移すことが、長年の懸案である食料安全保障の観点からも重要だ。(中略)
米価を巡っては、コメの業界団体が今月、生産・流通に必要なコストを精米で5キロ2816円と見積もる新指標を発表した。実態を反映していないとの異論もあり、分かりにくさは否めない。