クレームにはどう対処するのがよいのか。元JALのCAで研修コンサルタントの香山万由理さんは「クレームが来たら単なる謝罪に終始せず、怒りの背景にある感情や経緯を聞き出すことが、信頼回復につながる」という――。
※本稿は、香山万由理『気づかいの神さま』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
「申し訳ございません」で解決しない理由
クレームというと「厄介なもの」「避けたいもの」と考えられがちですが、ホスピタリティの観点で見れば、そこには大切な意味があります。なぜなら、クレームを言うお客様は「悲しい思いをしている弱者」だからです。
不安や不満が解消されずに心が傷つき、その延長線上で怒りとなって表れている――そう考えると、クレーム対応はまさに“弱者に寄り添う”というホスピタリティの本質そのものなのです。
人は、いきなり怒るわけではありません。「こんなことで怒るの?」と思うようなことでも、そこに至るまでには必ず積み重ねられた背景があります。だからこそ、ただ「申し訳ございません」と繰り返すだけでは、表面的な解決にしかなりません。
背景を丁寧に聞き出し、心の奥にある“悲しみ”を言葉にしてもらうことが、信頼回復の第一歩になります。
乗客から「ちょっと、あなた!」表情は険しく
CA時代、クレーム対応で印象に残る出来事がありました。ドリンクサービスの際、ある女性のお客様から「ちょっと、あなた!」と、突然大きな声で呼びかけられたのです。
すぐさま手を止め、「お客様、いかがなさいましたでしょうか」と対応すると「あなたたち、一体どういう教育を受けてるのよ!」と、表情は険しく、荒々しい様子でした。
私はドリンクサービスを後輩に任せ、腰を落として、お客様のお話を伺いました。
「お客様、私どもに失礼があったようで大変申し訳ございません。詳しくお話をお聞かせ願えますでしょうか。」
「貨物にブランドのバッグを預けたら、汚れて戻ってきたのよ! どうしてくれるの!」
「大変申し訳ございません」と謝罪をし、改めて事の経緯を伺いました。

