「右派」とはどのような価値観をもった人なのか。『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)を出した中京大学教授の松谷満さんは「国や伝統をことさらに重視する人のことを指し、4タイプに分けられる」という――。

父は本当にネット右翼だったのか

右派市民について考える入り口として、文筆家・鈴木大介さんの『ネット右翼になった父』(講談社現代新書、2023年)を取り上げます。この本は「ネット右翼」になってしまった著者の生前の父について、記憶や証言をたどり、なぜ父がネット右翼になったのかを掘り下げていくものです。

読みどころはいろいろありますが、これまでの調査研究を参考にして「父は『ネット右翼』だったのか」を「検証」する部分が、本書『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』の内容にも深く関連するため、以下に紹介します。

鈴木さんは、これまでの調査研究において、人々を「右翼」「保守」と認定する基準がどのようなものだったかを確認しました。社会学者らの研究では、中国・韓国が嫌いで、改憲に賛成、愛国心を重視するといった条件を満たすことを基準にしていました(*1)。また、政治学者の三浦瑠麗による調査では、外交・安保、経済、社会文化という3つの側面における価値観をもとに、保守‐リベラルを定めていました(*2)

バラバラの価値観だった右翼的発言

鈴木さんは三浦の指標がよりしっくりくると感じたようで、それを基準に父の「右翼」度を検討します。しかし、鈴木さんの父は「あらゆる項目においてブレブレ」だとの結果になりました(*3)。一部を抜粋すると、このようになります。

・軍事力の強化に関する発言→とくになし
・領土問題→無関心
・性別役割分担→三食の炊事は父の役割
・女性蔑視→そうした発言はあった一方、女性の活躍を高く評価する発言も

それゆえ、「(父は)ネット右翼の定義、保守の定義といった判断基準と比較しても、かなり統一性を欠いたバラバラな価値観を持っていた(*4)」のであり、「父の発言は非常にネット右翼的だったものの、価値観そのものが全面的にネット右翼的だったわけではないことがわかった」というのです(*5)

つまり、これまでの調査研究に照らせば、鈴木さんの父は“ネット右翼ではなかった”ということになります。

日本の国旗を見上げる人々
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