「今年の新卒初任給、高すぎ……?」
昨今のニュースを見てそんな衝撃を受けた若手・中堅社員の方々は少なくないはずです。マイナビ転職が実施した、2025年に新卒入社した新入社員800名に対するアンケート調査(※)によると、新卒の平均月収は23.4万円(前年比+1.2万円)。初任給アップの傾向が明確になっています。
そんな中、既存社員より新入社員の給与が高くなる「給与の逆転現象」が一部の企業で起こっている、と各種メディアで報じられています。
こうした状況に、モチベーションを削がれ、モヤモヤを募らせている人も多いでしょう。
そもそもなぜ「逆転現象」は起こるのか。私たちはこの状況にどう向き合い、どうやってビジネスシーンで生き残ればいいのか。組織人事のプロフェッショナルである、株式会社人材研究所代表の曽和利光さんに伺いました。
株式会社人材研究所代表取締役社長。1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム、2018年)など。
初任給高騰の“カラクリ”
昨今、新卒初任給の高騰ぶりがニュースでも大きく取り上げられています。その背景について曽和さんは「採用市場の需給バランス」という観点から解説します。
「平成の『失われた30年』でほとんど変わらなかった初任給が、ここに来て急に変わり始めました。ただ、日本の景気が良くなって全世代の会社員の給与が底上げされた結果かというと、それは違います。単純に採用市場の需給バランスが変わったことで起きている現象でしょう」
企業の羽振りが良くなったわけではなく、あくまで採用競争に勝つための戦略的な賃上げだというのです。では、その原資はどこから出ているのでしょうか。
「人件費というのは、基本的に『ゼロサムゲーム(総額が決まっている中で誰かが増えれば誰かが減る仕組み)』です。総額人件費のパイが決まっている中で、採用したい人材が採用できない場合(今回は新卒)、誰かの給与をおさえて採用費を捻出するしかないわけです。
私の肌感覚として、特に割を食っているのはこれから給与が上がるはずだった中堅層でしょう。と言っても『直近ちゃんと昇給している』という人も多いと思いますが、現状の給料をどうこうするのではなく、将来の上昇カーブをなだらかにしているんですね。それなら既存社員とハレーションを起こすことなく採用費を捻出できるので」
また、近年導入を進める企業が増えた「ジョブ型雇用≒職務等級制度」(職務ごとに給与を決める仕組み)も、この傾向に拍車をかけていると曽和さんは指摘します。
「職務等級制度の導入は、会社側からすれば人件費をコントロールしやすい手段でもあります。なぜなら、人の能力が年々上がる前提で給与を上げるのではなく、仕事の役割(ポスト)自体に値札を付けるので。極端な話、同じ仕事をしていれば新入社員でも50代でも給料が変わらないことになりますからね」


