「給与の逆転現象」にモヤモヤしてしまう理由

とはいえ、構造的な理由は理解できても、感情的には納得できない人が多いのも人情でしょう。「給与の逆転現象」に対するモヤモヤは、どこから来るのでしょうか。

Q.初任給引き上げの傾向についてどう思うか
「先輩社員との逆転現象について」という項目では、すでに来年の初任給を見据えた「おかしくない?」という不満の声も見える(画像提供=MEETS CAREER by マイナビ転職)

「報酬に対する納得感は『絶対額』ではなく『相対額(他者との比較)』で決まるという特徴がありますから、初任給の上昇傾向にモヤモヤする既存社員がいるのは分かります。

しかし、ここで冷静になるために必要な視点があります。それは、企業が給与を決めるうえで『社内価値(日々の仕事の貢献度)』と『市場価値(採用市場における希少性)』という2つの異なる物差しがあるということです。既存社員は『社内価値』で、新卒社員は『市場価値』で給与が決まりやすい傾向にあります。

新卒の給与が高いのは、採用市場でニーズの高い存在だからです。新卒社員が既存社員より実力やポテンシャルを評価されているというわけではなく、単に給与を決めるものさしが新卒社員と既存社員で違うだけなのです」

だからこそ、曽和さんは新卒社員も既存社員も「ある種の割り切り」が必要だと説きます。

「新卒の高給は『サインアップボーナス(入場料)』だと割り切ることです。プロ野球のドラフトのように、新人がものすごい契約金をもらって入団しても、年俸自体はそこまで高くないことがありますよね。あの契約金のような『プレミアム価格』が、今の新卒初任給には乗っているのです。

新卒も入社してしまえば既存社員と同じ土俵に立ちます。そこからは既存社員と同じく社内価値で評価されるようになります。社内価値が発揮できなければ評価は下がるし、社内価値を示せば上がっていく。既存社員は新卒の初任給を気にせず着実に成果を積み重ねることが大切ですし、新入社員も変に『優遇されている』と思わず入社後に評価の物差しが変わることを認識する必要があるでしょうね」

給与を上げたければ「上司の仕事を奪う」べき

では、既存社員が給与を上げるために取るべき具体的なアクションは何でしょうか。会社に「新卒初任給が高騰しているから上げてほしい」と交渉するのは得策なのでしょうか。

「それはおすすめできません。その理屈は会社側に通用しません。先ほど言ったように、そもそも給与を決める物差しが違うからです。新卒ではなく、社内で同じグレード(等級)の人と比較することでアピールすべきでしょう。『同じ等級のAさんより、私のほうがこれだけ成果を出していますよね?』というロジックなら説得力があります」

とはいえ、もっと確実に年収を上げる近道は「昇格」することだと曽和さんは言います。

「給与がもっとも上がるタイミングは、定期昇給ではなく『昇格』です。

ただ、勘違いしている人も多いのですが、『役職についたら頑張ります』では一生昇格できません。日本企業の多くは『すでに上のグレードの仕事をしている人』を後追いで昇格させます。まだリーダー職だけど、マネージャーの仕事(育成や予算管理など)を一部担っている、あるいは奪っている。そういう実績があるから、『じゃあ実態に合わせて課長にしよう』となるわけです。上司の仕事を一部担えるくらいの積極性で役割をはみ出していく。これが、昇格への一番の近道です。

もちろん、すべての人がマネージャーを目指す必要はないと思います。近年は『専門職』としてキャリアアップできる企業も多いですからね。そうしたプレーヤーとして給与を上げたいなら、やはり『専門性』を磨くことが近道でしょう。ジョブ型雇用の企業だと、先ほど申し上げた通り『役割』に値札が付くため、希少なスキルを持つ人材には高い給与の役割が得られます。ITエンジニアなら、難易度の高い資格を取得したり、プロジェクトを経験したりすることでそうしたスキルは身に付けられるはずです。給与アップを狙ううえで、昇格だけでなく『専門性を深める』という選択肢もあることも知っておいたほうがいいかもしれません」