必要な分を必要なだけつくる。それにより効率化を実現してきたトヨタ自動車において、「かんばん」の存在は切っても切り離せない。「かんばん」はいかにしてムダ削減に効果を発揮するのか――。

「かんばん」に込められたムダをなくす執念

トヨタで長くトヨタ生産方式の伝道をしてきた現日本事業本部本部長の友山茂樹は「かんばん」が始まった頃の様子を次のように推測している。「同数の実み(部品など)入りの通い箱と空からの通い箱を交換する実空みから運搬は工程内では通用します。後工程の作業者は、決まった個数を入れた部品箱を前工程に取りに行く。取りに行った作業者が部品を使い切ったら、再び、その空箱で前工程に部品を取りに行く。前工程の作業者は後工程が引き取った分だけの部品を作る。

生産量の増減に応じて部品箱の数を増減させることにより、在庫を最小限にコントロールする。ただし、工場と工場の間、それから仕入れ先までの後工程を実現しようと思ったら、かんばんがないと無理でしょう。後工程引き取りの実現にはかんばんが必要です。

かんばんがなければ作ってはいけない、かんばんがない実入りの部品箱はあってはならない、それが基本です」

かんばんは当初、プレスした鉄板だった。今は電子データになっているが、長い間、ビニール袋に入った紙がかんばんとして使われていた。紙には品番と一箱の収容数、引き取り情報、運搬指示情報が印刷されていた。

かんばんが機械工場に登場したのは1953年だ。クラウンが出た55年には機械工場と総組立工場の間でかんばんが通用するようになった。59年、大野耐一が新設された元町工場長になったら、工場全体でかんばんが採用され、仕入れ先へも逐次、かんばんが導入されていった。外注部品のすべてに採用されたのは65年だ。トヨタの工場とすべての仕入れ先にかんばんが定着するまで12年かかっている。大野の執念が、かんばんをトヨタ社内だけでなく、仕入れ先へも広げていったのである。

かんばんとは何かを理解するには役割よりもむしろ使い方のルールを知ったほうがいい。

使い方のルール(『トヨタ生産方式』より)
①かんばんが外れた分だけ後工程が前工程に部品を引き取りに行く
②前工程は「かんばん」の外れた部品を外れただけ、外れた順につくる
③「かんばん」のないときはつくらない、運ばない
④「かんばん」は現物に必ず付けておく
⑤一〇〇パーセント良品でなければならない
⑥「かんばん」の枚数を減らしていく

①から④までを読むと、かんばんは作り過ぎを防ぐ道具だとわかる。⑤は不良品を防ぐことにも効果があると伝えている。⑥は枚数を減らすことで生産ラインの様子を見て緊張感を与える効果がある。

不慣れな新人でも、上司の指示なくスムーズに工場作業できる理由

全体として見ると、かんばんは、後工程引き取りを完成させるための情報基盤だ。かんばんが指し示しているのは、「客が注文した部品」だ。かんばんが付いていない部品とは発注されていない部品なのである。

かんばんを理解するのは難しいといわれているけれど、実際に工場に行けば難しいことでも何でもない。騒音のある工場のなかでは上司が部下に数字を口頭で伝えることはできない。部品に一枚のメモが付いていれば何をすればいいか、何個作ればいいのかが瞬時にわかる。