金銭を要求してくる悪質なクレーマーを撃退するにはどうしたらいいか。『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(あさ出版)を書いたクレーム対応研修講師の津田卓也さんは「クレーマーに『警察を呼びますよ!』と切り返すのは逆効果だ。相手を不用意に刺激せずに、スマートに撃退する方法があるので試してほしい」という――。(第2回)
拳を握る人
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「カスハラ」と「正当なクレーム」をどう区別するか

クレーム対応の現場でまず行うべきは、目の前の苦情が「正当なクレーム」なのか、「悪質なカスハラ」なのかを明確に定義することです。この区別ができなければ、組織も従業員も疲弊し、悪質な要求に屈する結果を招くことになります。

クレームとは、本来、顧客の「実現可能なニーズと、提供されたサービスとの間に生じたギャップ」を埋めるために存在するものです。たとえば、鉄道の遅延や、スーパーでの商品不良、飲食店での商品提供の遅れ、といった苦情は、企業や組織の改善点を示唆するものであり、真摯に対応すべき「正当なクレーム」です。

しかし、悪質なクレーム、あるいはカスハラ(カスタマーハラスメント)は、この「実現可能なニーズ」の枠を完全に逸脱します。たとえば、喫茶店で「自分でこぼしたコーヒーのクリーニング代を払え」といった理不尽な要求や、市役所などで「公務員なら土下座しろ」といった人権を無視した要求を突きつけることがその典型です。

悪質なクレームが恐ろしいのは、要求の内容が正当か否かにかかわらず、暴言、暴力、威圧、長時間の拘束、セクハラといった不当な手段を用いて要求を通そうとすることです。重要なのは、要求の内容ではなく、要求を通そうとする手段が悪質かどうかという点に集中することです。従業員に危害を加える行為は、すべて即座に悪質なクレームとして対処しなければなりません。