物事を明瞭に説明するコツは何か。スピーチコンサルタントの阿部恵さんは「説明に事実と見解を混在させると曖昧な印象を与え、相手には伝わらない。私はアナウンサー時代に『“思います”はやめろ!』と指導されていた」という――。

※本稿は、阿部恵『きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

身体の前で手を使ってバツ印を作る女性
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

ビジネスの説明や提案に活用できるFABE法の中身

説明上手は相手の「ベネフィット」を示し、

説明下手は「仕様説明」に終始する

「ちゃんと説明しているんですが、全然売れないんですよ……」と、営業パーソンから相談されたことがあります。

実際に、どのような説明をしているのか実演をしてもらったところ、すぐに原因がわかりました。彼は、商品の仕様説明ばかりしていたのです。

例えば、冷蔵庫の営業パーソンの説明例です。

「こちらの冷蔵庫は、500Lの大容量で、AIによる自動温度管理と温度コントロール機能付きの野菜室を備えています。自動製氷機能もあり、省エネ性能は年間消費電力320kWhです」

FABE法
イラスト=村林タカノブ
出所=『きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」』

この説明を聞いて、あなたは「これ、買いたい~!」と思うでしょうか? 残念ながら私には、用語も内容もさっぱりわかりませんでした。確かに、性能は立派ですが、肝心なのは「それが自分の暮らしにどう役立つか」ではないでしょうか。

お客様によって、何を重視するかは変わります。その興味の対象にアプローチする説明の「型」が「FABEファブ法」と呼ばれるものです。FABEとは、Feature、Advantage、Benefit、Evidenceの頭文字をとったもの。次のようになります。

F :Feature(商品の特徴)
A :Advantage(商品の優位性)
B :Benefit(お客様が得られるメリット)
E :Evidence(根拠)

先ほどの説明下手な営業パーソンは、商品の特徴のみを羅列し、肝心のBenefit(お客様が得られるメリット)が抜け落ちていたのです。またEvidence(根拠)では、その商品、サービスのよさを示す客観的数字やデータを示すと説得力が増します。

先ほどの営業トークを「FABE」に当てはめてみましょう。共働きのファミリー層を想定した冷蔵庫の営業トークです。

F:特徴 大容量冷蔵庫「スマートフレッシュ500」をご紹介します。

A:優位性 AIが自動で庫内温度を管理してくれるので、食材の鮮度が長持ち。ドアの開け閉めに応じて最適な温度にしてくれます。自動製氷機能も付いています。

B:メリット 平日は買い物に行けないご家庭でも、週末にまとめ買いをすれば約7日間、野菜もお肉も新鮮なまま。「氷がない~」とお子さんが困ることもなく、家事の手間も食材の無駄も減ります。

E:根拠 ユーザーの93%が「家事のストレスが減った」と回答。「買い物の回数が減った」「野菜や肉が傷まない」と、高く評価しています。

FABE法は、ビジネスシーンでの説明や提案にも活用されています。商品やサービスの特徴だけでなく、お客様にとっての具体的なメリットを伝えることが重要です。