【中山】そうした形で、アジアでのファミリーマートのバリューチェーンづくりに汗をかいてきましたから、それなりのネットワークができています。上田が評価してくれたのはそこだろうと思います。

コンビニのビジネスモデルは、自動車の完成車メーカーと似ているかもしれません。海外に進出する際には、部品メーカーにあたる取引先の方々にも進出していただき、「ファミリーマート品質」の商品を現地コストで製造してもらう。われわれコンビニは、そうした商品の供給を受けて、現地の人たちに販売するというビジネスです。

ファミリーマートはその仕組みをまず中国でつくり上げ、いまはそれ以外のアジア各国へ広げています。今後もその動きは変わりませんから、私自身の立場は変わっても、これまでのネットワークが生きてくるだろうと思います。

――とはいえ、小売業の立場から見る景色はこれまでとは違うと思います。小売りの仕事の面白さはどこにありますか。

【中山】ファミリーマートには国内だけで9000以上の店舗があり、現場から毎日、新鮮なデータが集まってきます。それをもとに、明日は消費者がどう考えるかを予測します。

大事なことは、データはあくまでも過去のものだということです。お客様は昨日の気持ちではなく、今日の気持ちで買い物をします。昨日の気持ちに沿った商品だけが並んでいても買ってくれません。では、どんな商品が売れるのか。いまはそれを探求していくのが楽しみです。

9000店の現場の人たちが日々、お客様と接して感じていることにヒントがあると思います。これまで同様、現場主義を貫いていきたいですね。

ファミリーマート社長 中山 勇
1957年、東京都生まれ。都立戸山高校、東京大学農学部卒。81年、伊藤忠商事入社。2012年4月、常務執行役員食料カンパニーエグゼクティブバイスプレジデント兼食糧部門長。13年1月から現職。高校から社会人までアメリカン・フットボール部で活躍。
(面澤淳市(プレジデント編集部)=取材・構成 宇佐美雅浩=撮影)
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