絶望的な状況でも「いい人生」を送る方法
ベトナム戦争で捕虜になったある兵士が、長期にわたる捕虜生活において、なんの根拠もないのに「楽観主義」を貫いてすごした。
現実は、自分がいつ解放されるのか、そもそも解放されるかどうかもわからない状況だった。彼は、自分にこの状況をコントロールする力はないということを理解していた。状況に抗っても、殺されるか、あるいは絶望のあまり生きる気力を失うだけだ。
そこでこの兵士は、ただ楽観的でいることを意識するようにした。状況はいつか変わるという希望を捨てなかった。最終的に自由になることを意図したわけではない。彼が行ったのは、可能性を信じ続けることだ。そしてついに解放されると、このときに培った楽観的な姿勢によって、新しい人生を力強く歩んでいくことができたのだ。
つまり、わたしが考えるマニフェステーションの本質とは、心身ともに健全で幸福な状態=「ウェルビーイング」を実践することであり、いい人生を送ろうという強い意志をもつことだ。
楽観主義の効用
マニフェステーションによって、いわゆる「楽観主義的傾向」(※2)を育てることもできる。
楽観主義的傾向のある人は、人生のあらゆる重要な状況でいい結果になると信じることができる。さらに楽観主義的傾向には、心血管機能が向上する、傷が早く治る、病気の進行が遅くなるなど、さまざまな健康上の利点があることも科学的に証明されている。
意図したものが現実にならなければ、マニフェステーションが成功したとは言えないという人もいるだろう。しかし、わたしはそうは思わない。意図を何度も何度も視覚化することの本当の価値は、「人生はなんとかなる」という前向きな姿勢で生きられるようになることだ。何があっても最終的にはうまくいくと信じられる人は、外側の状況がどうなろうと、それを受け入れ、力強く立ち直ることができる。
※2 楽観主義的傾向 Michael F. Scheier and Charles S. Carver (2018). “Dispositional Optimism and Physical Health; A Long Look Back, A Quick Look Forward,” American Psychologist , 73(9):1082-1094.