本当に頭のいい人はどこが違うのか。教育学者の齋藤孝さんは「頭がいいといわれる人は、問題をより大きな問題の一部として捉え、ほかの要素とのつながりを考えることを習慣化している。その具体例は江戸末期に欧州を視察した渋沢栄一の感想にあらわれている」という――。

※本稿は、齋藤孝『本当に頭のいい人がやっている思考習慣100』(宝島社)の一部を再編集したものです。

「無難な会議」はなぜダメなのか

議論をしていると、とにかく波風を立てないように無難にまとめようとする人がいます。

会議で、司会者によってはひたすら秩序を保ちつつ、平穏無事に1時間の会議を終えようとします。

しかし、そこからは新しい発想は生まれません。

議論や会議は、「秩序(コスモス)」と「混沌こんとん(カオス)」がほどよく行ったり来たりする状態が理想です。

コスモスだけに終始してしまうと、議論はそこに小さく収まってしまって、新しいアイデアは生まれてきません。

まとまりかけたコスモスに、大胆な角度から予期せぬ意見を放り込むと、ある種の混乱が起きて会議はカオス化します。

チームミーティング
写真=iStock.com/howtogoto
斜め上の意見だけでは会議はまとまらない(※写真はイメージです)

カオスからコスモスにもっていく

見たことがない発想が生まれるのは、そういうときなのです。

予定調和で終わらせないというのが大事なポイントです。

一方、そういった斜め上の意見だけで1時間話し合っても、会議は永久にまとまりません。尖った意見の数々を練り上げながらコスモス化していく。この作業を繰り返すうちに、参加者のアイデアが混ぜ合わさったような、重層的に折り重なった結論が導き出され、結果として会議は充実したものとなるわけです。

これは、普段の会話でもそうですし、講演会で聴衆の前で話すようなときも同じです。

たとえば、本の話をするとき、ひたすらその内容のすばらしさを説くというやり方でもいいのですが、あえて「本は絶滅する運命にある」とか「電子情報の一部となっていく」などと言い出してカオスを起こし、「それでもなぜ人は紙の本に魅せられるのか」とコスモスにもっていくと、奥行きと幅ができ、おもしろい展開が生まれることも多いです。