頭がいい人の説明は、なぜわかりやすいのだろうか。教育学者の齋藤孝さんは「頭がいい人は物事を的確で具体的な例を用いて説明できる。抽象的で一般化しづらい概念ほど、上手にアレンジして伝える必要がある」という――。
※本稿は、齋藤孝『本当に頭のいい人がやっている思考習慣100』(宝島社)の一部を再編集したものです。
「頭がいい人」は人の手柄を取らない
会議をしているときなどに、他の人が提案した話に乗っかり、それをさも自分のオリジナルの考えであるかのように話を進めようとする人がいますが、頭のいい人はこうしたことは絶対にしません。
「先ほどAさんもおっしゃっていましたが、私もたしかにそのとおりだと思います」
と、あえてAさんの名前を出し、「Aさんの意見を引用させてもらった」ということを全員の前で示すことが大切です。
要は、無理やり自分の「手柄」にしてしまわずに、正しくAさんの「手柄」にするということ。
これにより、Aさんにとってあなたは「味方」「同士」「意見を共有できる仲間」という存在になりますし、引用されたこともシンプルにうれしいと感じるはずです。
名前を呼ばれると親近感をもつ
何より、その提案が「Aさんから発意されたもの」であるという事実が、そこで参加者全員に共有されることになり、その後の議論が正しく進められます。
これは文脈力にも通じるもので、長時間にわたる会議を侃々諤々とやっていると、その話の発端がどこにあったかわからなくなるときがあります。
そうした混乱の中でも、「起点はAさんである」ことをきちんと整理して押さえられている人は、文脈を正しく読み取る力も備わっている人といえます。
名前をあえて出すという行為は、相手との心理的な距離を近づける効果もあります。
これは「ネームコーリング」と呼ばれるコミュニケーション法のひとつとして認知されており、人は自分の名前を呼んでもらうと、その相手に親近感をもつと考えられています。
名前とはその人のアイデンティティと密接なつながりがあるのです。