後悔せずに、納得して最期を迎えるためには何をすればいいか。医師の和田秀樹さんは「いつ死ぬかわからないと思えば、生きているいまを楽しまないと損だ。貯金が思いの外たまっていたら、一度は運転したかったポルシェを買おうとか、元気なうちに夫婦で世界一周旅行に行けばいい。『どうせ死ぬんだから』と思えば、好きなことができる。逆に、死にたくないと思えば思うほど、人生の充実度、幸福度が下がってしまう」という――。

※本稿は、和田秀樹『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

海を見る老夫婦の背面図
写真=iStock.com/Wavebreakmedia
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ああ、もう死ぬのか…

あれは、2019年の正月のことです。のどが異常に乾いて10分おきに水を飲まないといられなくなり、夜中に何度もトイレに立つ日が続いて、ひと月で体重が5キロも減ってしまいました。

バイト先の病院の院長先生が心配して採血をしてくれたのですが、血糖値が660㎎/dlもありました。重症の糖尿病です。

私はたまにしか血液検査を受けないのですが、そんなに血糖値が高かったことはありません。体重も激減していることから、膵臓がんの可能性が高いと言われて、あれやこれや検査を受けることになりました。

もうインスリンの分泌がかなり低下して、糖尿病が悪化しているような膵臓がんなら、末期と言ってもいい……。「ああ、私はもう死ぬのか、これまでか」と思いました。

このとき、私はまだ58歳。以前から血圧が高いとか慢性の心不全になりかねないなどと言われていましたから、長生きはできないだろうなと多少は思っていましたが、それでもやっぱり自分にとって「死」は遠いものでした。

はっきりと自分の死を覚悟したのは、そのときが初めてです。