※本稿は、和田秀樹『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
薬の副作用は高齢者ほど出やすい
年を取れば、一人でいくつもの病気を抱えていることが多く、病気ごとにそれぞれの医者から薬を処方されるのはよくあることです。
病気そのものを治療する薬のほかに、血圧、血糖値、コレステロール値をコントロールする薬や、別に困ってもいないのに骨粗しょう症の薬を追加されてしまったりします。
「食後のデザート」なんて冗談を言いながら、あちこちの病院からもらった薬を何錠も水で流し込んでいる高齢者はどこにでもいるでしょう。
私は基本的に、安易に薬を出すべきではないと考えています。
言うまでもなく、100%安全な薬などありません。副作用がない薬などないのです。
一度に飲む薬の量や種類が多くなればなるほど、副作用の出る確率も高くなります。いろんなデータによれば、6種類以上飲むと副作用が急に増えるといわれています。
しかも薬の副作用は、若い人よりも高齢者のほうが出やすい傾向にあります。
高齢になるほど、薬を飲んだときの肝臓の代謝機能や、腎臓の濾過機能が落ちてくるので、薬が体内に残る時間が長く、飲み始めてすぐ副作用が出なくても、しばらくしてから思わぬ影響が出ることもめずらしくありません。
多剤服用による腎機能障害のリスクも高まります。
検査や薬が「出来高制」だった頃は、医療を行えば行うほど病院の利益が増える仕組みだったので、病気を治すためだけでなく、万が一に備えてとか予防のためにとかいう名目でたくさんの薬が出されていました。いわば薬の押し売りです。
ところが、点滴や投薬をいくらやっても収入が同じ入院医療の「定額制」が導入されたために、ある老人病院は検査も薬も3分の1に減らした。
その途端、点滴のしすぎや多剤服用のせいでぼんやりと寝たきりになっていた高齢者の大半が、意識もしっかりして歩けるようになったといいます。
こういう事例が日本中の老人病院で頻発したというのですから、驚くほかありません。