幸せな老後を過ごすには何を意識すればいいか。医師の和田秀樹さんは「自分への要求水準が高い完全主義の頑張り屋さんは、自分の素直な感情や本音が踏みにじられて、だんだん悲観的になっていく。そうではなく、なるべく多様な答えを知っているほうが時代の変化に適応できる。選択肢をいくつか持つことは、人が生きていく上でも重要なポイントだ。私は頭の固いバカになるのが一番怖いので、ずっと勉強を続けている」という――。
※本稿は、和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「かくあるべし思考」自分への要求水準が高い「頑張り屋さん」
大企業に勤めていた、あるいは管理職だったという男性が認知症になった場合、デイサービスを利用することをすすめても大半は嫌がります。「人に頼ってはいけない」「弱った人やボケた人たちと遊ぶなんてみっともない」と思い込んでいるからです。
精神医学の世界では、こうした考え方を「かくあるべし思考」と呼んでいます。
人に頼ってはならない、男たるものこうでなければいけない、与えられた仕事はどんな困難があってもやり遂げなければならない、といった完全主義の人は、自分への要求水準が高い、いわば頑張り屋さんだからです。
自分への要求が高い分、「頑張らなければいけない」と自分を追い込み、それができなかった場合、歯痒くてイライラしたり、できない自分自身を情けなく感じたりします。
このように「かくあるべし思考」は、自分の考えで自分を縛るために、自分の素直な感情や本音が踏みにじられて、だんだん悲観的になっていきます。
現在の精神医学の考え方では、「かくあるべし思考」とか、「この道しかない」とか思うことがもっとも心に悪いとされています。精神的な落ち込みが強くなると、うつを発症しやすくなります。