認知症になったら、日常生活で何を気をつけるべきか。精神科医の和田秀樹さんは「日本人は何かにつけて怖がるだけで対策を考えないので、認知症になったら一人で何もできずに周りに迷惑をかけるという思い込みがある。高齢者の運転にしても、国立長寿医療研究センターの調査では、運転をやめた高齢者は運転を続けている高齢者にくらべ、8倍の要介護リスクがあることがわかっている。本当に危ないのかどうかの実態調査や統計学的な調査もまったくしないで、免許を取り上げるというのは、認知症の人に対する差別でしかない」という――。

※本稿は、和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

横断歩道で待つ高齢男性
写真=iStock.com/seb_ra
※写真はイメージです

何かにつけて怖がるだけで対策を考えていない日本人

老年精神科医として非常に残念に思っているのは、認知症に対する正しい理解が遅々として進まないことです。

日本は、2007年に65歳以上の人口の割合が21%を超える「超高齢社会」に突入したあとも、高齢化率は上昇を続けています。

昔とくらべ、要介護や認知症がめずらしくなくなっているにもかかわらず、介護保険や福祉のサービスについて事前に調べない人が少なくありません。

コロナにしてもそうでしたが、日本人というのは何かにつけて怖がるだけで、きちんと調べて、いざとなったときの対策を考えていない人が多いのです。

私は、それを「恐れすぎ病」と呼んでいるのですが、この病にかかっているせいか、認知症に対する誤解がなかなか解けない。一時は、昔より偏見が強まっている印象さえ受けました。

人気脚本家の橋田壽賀子はしだすがこさんが、「私は80歳を過ぎた頃から、もし認知症になったら安楽死がいちばんと思っています」と雑誌に寄稿して話題を呼んだのは2016年のことでした。

私はその記事を読んで、正直、やれやれと思ってしまいました。こうした発言をする人は、認知症に対して大きな誤解をしているからです。

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