運転をやめた高齢者は8倍の要介護リスク
本来なら、マスコミが冷静な解説をすべきなのですが、高齢者が事故を起こしたときにテレビのコメンテーターなどは「やっぱり高齢者の運転は危ないですねえ」と単なる印象論を口にする。
私だったら「免許を返納するとかなりの数で要介護高齢者が増えて、高齢者が不幸せになり、国家の介護予算が増える」と答えますが、そういう本当のことを言う人間はなぜかマスコミから干されてしまうのです。
現に、国立長寿医療研究センターの調査では、運転をやめた高齢者は運転を続けている高齢者にくらべ、8倍の要介護リスクがあることがわかっています。
認知症が一定以上重くなってしまった人であれば、デイサービスなどを利用して外出できますが、そうでない場合、とりわけ地方の高齢者は、自動車がないと外に出る手段がなくなってしまいます。
買い物にも病院にも行けないし、サークルにも参加できません。外出が減ることによる刺激のなさが、認知機能を落としてしまうのです。
だから私は、高齢者の方たちに「免許を取り上げられたらボケてしまいますから、意地でも自主返納などしないでください」と話しています。
いや、そうは言っても認知症の人を運転させたら危ないでしょう、と思われるかもしれませんが、運転に支障をきたすレベルになるとエンジンもかけられません。エンジンをかけて普通に走れる人は、そんなに危険ではないはずです。
実際に、交通事故のもっとも多い世代は24歳までの若い世代です。高齢者の事故が目立つようになったのは、高齢者が増えたから仕方ありませんが、高齢者の死亡事故の場合、対人事故は2割弱、死亡事故の4割はものにぶつかって自分が亡くなる事故なのです。