認知症になったら、どのような対応をするといいか。精神科医の和田秀樹さんは「認知症とはっきりわかったからといって、あわてることはない。『残存機能』といって、昔から習慣づけていた行動なら、認知症になっても変わらずにできることはたくさんある。認知症の人にとって大事なのは、とにかく脳を使ってこの残存機能を活かし続けることだ。認知症とわかった途端、周囲の人間が、仕事は辞めさせようとか、孫の子守りはやめさせようとか、あるいは運転をやめさせようとかするが、そんな話になったらかえって症状は進んでしまう」という――。

※本稿は、和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

車を運転している高齢者
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認知症と告げられてもあわてなくていい理由

認知症を早期発見するには、認知症の兆候を見逃さない臨床経験が豊富な専門医に診てもらうことが必要です。

そして、認知症と診断されたなら、「年を取ったんだからしかたない」とあっさり受け入れて、その症状の進行を遅くする努力や工夫をしてください。

そのうえで「機嫌良く生きていくこと」を最優先して、認知症を飼い慣らしながら人生を楽しんでいけばいいのです。

認知症とはっきりわかったからといって、あわてることはありません。症状が非常に軽くて、日常生活にほとんど支障が生じていない場合でも、医師の多くは「認知症です」と診断します。

理由は2つ。まず1つは、早めに治療を始めたほうが、認知症の進行を遅らせる可能性が高くなること。2つ目は、認知症と診断すれば、介護保険を利用できるようになるからです。

軽度でも、認知症という診断が出ればもっとも低いレベルの「要支援1」に認定されますから、週2回ほどデイサービスを利用できるようになります。

デイサービスに行けば、当然、体も頭も使いますし、いろいろな人との会話も増えるので脳が刺激されて、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。

私の経験でも、デイサービスに行って多くの人と交流する高齢者は、認知症の進み具合が遅くなる傾向が見られます。逆に、認知症と診断されて、人との交流を減らしてしまう人は、症状の進行を速めてしまうように感じています。