※本稿は、小島正美、山﨑毅『食の安全の落とし穴』(女子栄養大学出版部)の一部を再編集したものです。
「健康食品」という法律上の定義はない
食品の法令上のカテゴリーとして「健康食品」なるものはない。だが、食品の機能性を謳ってもよいと国が認めているものとしては保健機能食品があり、テレビコマーシャルでは、トクホや機能性表示食品など、健康への効果を謳ったものが毎日宣伝されているが、「医薬品」ではない(疾病に対する効能・効果はない)ということに要注意だ。
また、健康になると思われている食品が、逆に健康を害する場合も多数報告されている。2024年3月には、紅麹サプリによる健康被害の問題も起きている。
消費者からの苦情の声を国民生活センターで長年調査してこられた宗林さおり先生に、健康食品のリスクの実態を、そして健康にとって期待できる部分についてもお話しいただいた。
――最近「サプリメント」という用語もよく聞きますが、「健康食品」と同じことでしょうか? ビタミンやミネラルなどの栄養素を毎日摂るイメージなのですが、いかがでしょうか。
「サプリメント」とか「健康食品」はイメージとしてはわかりやすい言葉ですが、法令上定められた定義はありません。
ただサプリメント自体が「補完する」「補充する」などの英語なので、ビタミンとかミネラルを栄養補助するというイメージが、最も近いかもしれません。なお、「サプリメント形状の健康食品」という場合は、通常、医薬品のような錠剤やカプセル剤のものを指します。
信頼できる臨床データがない「健康食品」もある
――「健康食品」でも、保健機能食品に該当しない食品のテレビコマーシャルをよく見ます。
「いわゆる健康食品」というように「カッコ」がついているときは、国が機能性表示を認めた保健機能食品以外の「いわゆる健康食品」のイメージですが、機能性の根拠が乏しいものが多く含まれており、国も機能性表示自体を認めていないものの、イメージで健康を訴求した食品となります。
「保健機能食品」以外の「いわゆる健康食品」については、結局、機能性関与成分すら不明のものが多いので、ヒトでどのくらい摂取したら、どのような機能性が発現するのか、信頼できる臨床データもないケースがほとんどです。
天然の成分だから健康によいなどと謳ったり、個人の感想だけでスッキリ効果を謳っているものもありますね。その意味でも、消費者は保健機能食品(トクホや機能性表示食品)であることを確認のうえ、最低限、機能性表示の根拠となる臨床データがあることが確かな商品を、選んでいただきたいですね。