「健康食品」を多めに摂って体調不良になることも

――健康食品が原因で肝障害とは衝撃的な事実ですね。別の消費者からのご質問です。「お薬とは違って1日3回1錠ずつ飲みなさいというわけではないので、健康食品ならある程度多めに摂っても大丈夫でしょうか?」

健康食品については逆に、機能性成分の含有量も商品によって大分違いがありますし、錠剤やカプセルの形をしていると、どうしても食事にプラスオンしていくお薬のような飲み方になります。

ですので、長期にわたって多めに摂取したら体調変化等が起こらないとも限りません。

たとえば、「便秘の人によい」といった健康食品を多く飲めば、下痢になる可能性が容易に考えられますよね。あと健康食品は、医薬品ほどその現品で成分含量を厳しくチェックされていませんから、少なくとも多めに摂取するのは避けるべきでしょう。

「定期購入してしまい、次々と届くので多めに飲んだら体調不調になった」という話は、意外にありがちな事例です。国民生活センターに寄せられる消費者からの苦情データがPIO-NETという制度で収集されておりますので、ここ最近の有害事象件数を図表1でご確認ください。

【図表】危害情報の上位10商品・役務等の推移
図表=『食の安全の落とし穴』より

健康食品には「被害救済制度」が存在しない

――こちらも、健康食品についてよくある質問です。「友人がネット広告を見て、ダイエット食品をたくさん購入しているとのこと。仕事が忙しいので、普通に食事して運動もしないで体重が減った、筋肉も増えたと喜んでいますが、そんなに簡単に健康食品で痩せるのでしょうか?」

痩せるかどうかは、体に取り入れるエネルギーと消費するエネルギーで決まります。ですので、これだけ飲んでいれば激的に痩せるというような話はありません。

抗肥満薬というのは今でも医薬品がありますが、基本的には気持ちが悪くなって食欲抑制剤として働くものが多いようです。

――他の消費者からのご質問です。「輸入もののダイエット食品は危険という情報を見たことがありますが、自然食品なので副作用までは心配無用でしょうか?」

輸入のものだから安全性に問題があるということはありません。

ただ、各国で規制も異なるため、本来は日本で輸入品として流通できない医薬品成分が個人輸入等で入ってくることもあります。その場合は未承認の医薬品を入手してしまうことになりますが、医薬品は作用が強いので注意が必要です。

厚生労働省のサイトにも、2022年6月にSNS等で購入したダイエット用健康食品を摂取した消費者から、ほてりや動悸などの有害事象報告があり、医薬品のシブトラミンが検出されたとありますが、シブトラミンの他にも比較的よく個人輸入による事例を見かける成分があります。

また、本人は個人輸入だと自覚しないで、個人輸入代行のサイトから未承認の医薬品を購入してしまっている例もあり、危険です。「自然食品」という言葉はいい響きではありますが、どんなものでも摂り過ぎると悪影響が出始めます。

「自然食品=悪影響がない」とは言いきれません。なお、図表2の通り医薬品の場合には運悪く副作用が出てしまって健康被害に遭った場合に国の救済制度がありますが、健康食品の場合には被害救済制度がありません。

【図表】医薬品の副作用救済制度
図版=『食の安全の落とし穴』より