コメ作は大規模化することで収益向上する

今の農家が高齢化して農業の跡継ぎがいなくなって農家人口は減少するという。また、耕作放棄して農地がなくなっていくという。これは農業収益が低いからである。解決するには、農業収益を高めればよい。

10年前に出された“増田レポート”は、人口減少でかなりの市町村が消滅するというショッキングな内容だった。秋田県は秋田市も含め一つの村を除いて壊滅するとした。その一つの村というのは、全戸農家で、しかもほとんどがコメ農家の大潟村である。

一戸当たりの規模はほぼ20ヘクタール。都府県の平均的な規模の20倍である。コメのような土地利用型農業では、次の図(図表3)のように、規模が拡大すると大型機械で効率的に作業・生産できるので、コストは下がる。所得は売り上げからコストを引いたものなので、規模拡大によって所得は増加する。大潟村の一戸当たりコメ所得は1400万円である。子供たちは東京の大学に進んでも必ず村に戻る。全戸後継者がいるので、村は消滅しない。

出所=「平成30年農業経営統計調査」より作成

農地維持のためにも農家の数は減らしたほうがいい

都府県の平均的な農家である1ha未満の農家が農業から得ている所得は、ゼロかマイナスである。ゼロの米作所得に、20戸をかけようが40戸をかけようが、ゼロはゼロだ。しかし、30haの農地がある集落なら、1人の農業者に全ての農地を任せて耕作してもらうと、1600万円の所得を稼いでくれる。これをみんなで分け合った方が、集落全体のためになる。

農地面積が一定で、一戸当たりの農家規模を拡大するということは、農家戸数を減少させるということである。特に、コメ作には規模の小さい非効率な兼業農家が多すぎる。農業で生計を立てている主業農家は9%に過ぎない。

大家への家賃が、ビルの補修や修繕の対価であるのと同様、農地に払われる地代は、地主が農地や水路等の維持管理を行うことへの対価である。地代を受けた人は、その対価として、農業のインフラ整備にあたる農地や水路の維持管理の作業を行う。地主には地主の役割がある。

健全な店子(担い手農家)がいるから、家賃でビルの大家(地主)も補修や修繕ができる。このような関係を築かなければ、農村集落は衰退するしかない。農村振興のためにも、農業の構造改革が必要なのだ。